今年2月の雪まつりでは、ウポポイを紹介する大雪像が建てられた(時事通信フォト)
騒動の舞台は、札幌アイヌ協会。公益社団法人・北海道アイヌ協会(会員数約3200人)の「札幌支部」にあたる。北海道アイヌ協会の50の地方協会の中でも、札幌アイヌ協会は最大の会員数(約220人)を擁する中核団体だ。
札幌アイヌ協会の会長を10年以上務める阿部一司氏(アイヌ名・ユポ)と、その実妹で副会長を務める多原良子氏に対し、同協会の理事の過半数が真相解明のための理事会開催を求める事態となったのだ。
発端は、今年2月に行なわれた「第71回さっぽろ雪まつり」だった。札幌市は雪まつりのアイヌ関連事業として、〈アイヌ文化魅力発信イベント〉〈アイヌ文化PRイベント〉の名目で、計7965万6500円の予算を計上していた。
札幌市は同事業を受託した株式会社北海道博報堂に「(再委託先の)札幌アイヌ協会と調整して(事業を)進めるよう指示」(市民文化局市民生活部)したという。
ところが、本誌が関係者から入手した北海道博報堂の「再委託申出書」には、札幌アイヌ協会とは別に「メノコモシモシ」という団体の名が記されていた。札幌アイヌ協会副会長の多原良子氏が代表を務める団体だ。
札幌アイヌ協会が受託するはずの事業の一部が、多原副会長が主宰する団体で受託されていたという構図なのだ。札幌アイヌ協会事務局長の貝澤文俊氏が言う。
「今年の雪まつりは、アイヌ新法が適用されてから初めての大きなイベントで、アイヌにとって特別な意味があった。札幌アイヌ協会として、我々は公明正大に責任を果たさねばならなかった。会長と副会長が協会を私物化するような体制を改めなければならないと考え、家族政権の廃止と、辞任を申し立てたい」