曾根崎役での“土下座退室”が話題となった佃典彦(時事通信フォト)
これまでの観劇回数は4000回を超え、『マツコの知らない世界』(TBS系)に出演経験もある演劇ライターの上村由紀子氏は、『半沢直樹』のキャスティングに大きな意義を感じている。
「TBS日曜劇場の制作スタッフは、テレビの世界であまり知られていない実力派の俳優を積極的に登用し、『ほら、こんなにすごい人がいるんですよ』と提示することに価値を見出している気がします。『半沢直樹』第1シーズンでは、映画を中心に活動していた滝藤賢一とミュージカル界の貴公子・石丸幹二がその枠。2人とも『半沢直樹』を機にテレビの世界でも一気にメジャーな存在になりました。
放送中の『半沢直樹』帝国航空編では『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』『キャッツ』などの大型ミュージカルで大役を担った鈴木壮麻を“グレートキャプテン”役に起用したり、中部地方の演劇界で有名な佃典彦を堺雅人と香川照之に歌舞伎調で詰めさせたりと、さらに“知る人ぞ知る”存在にスポットを当てています」
上村氏によると、『半沢直樹』は演劇好きならニヤリとする小ネタも満載らしい。
「よく似ていると言われる山西惇と八十田勇一を兄弟役にしたり、かつて『夢の遊眠社』でともに活動した段田安則と浅野和之を共演させたり、『劇団東京乾電池』で師弟関係にあたる柄本明と江口のりこの関係性をそのままドラマの設定に生かしたりと、ツウ好みのキャスティングも見どころです。今後どんな隠し玉が出てくるのか、目が離せません」(上村氏)
挑戦できる立場だからこそ、“発掘”に励む——。そんな責任感が『半沢直樹』のキャスティングから感じられるようだ。
●取材・文/原田イチボ(HEW)