暴力団対策に長年携わってきた藪氏に、どうしても訊いてみたいことがあった。それは一部に根強く残る“ヤクザは社会の必要悪だ”とする考え方についてだ。藪氏は持っていたコーヒーカップを置き、身体を少しだけ乗り出すようにして答えてくれた。
「ヤクザは社会のハグレモノに居場所を与える存在でもある、といった考え方をする人が確かにいる。でも、それを任侠とかっていって美化するのはよくない。あなたたちマスコミの中にもいるでしょ、ジャーナリストの肩書を使った暴力団のスポークスマンみたいな人がね。私だって彼らの存在を否定はしません。ただ、やっぱり暴力団は悪です。それは間違いない。誰しもが暴力に頼らずに生きていける人間になれる。それを信じてほしい」
●取材・文/末並俊司(ジャーナリスト)