庶民派のイメージは偽りだったのか(AFP=時事)
菅氏の集金力の原点は秘書時代に小此木彦三郎・元建設相の後援会づくりに駆け回った頃からの人脈で、運輸族だった小此木氏からJRや私鉄など鉄道会社の人脈を引き継ぎ、鉄道と関係の深い建設会社や不動産、そして地元の多くの企業にパイプを広げていった。
『総理の影 菅義偉の正体』(森功著)のなかでも自身の後援会のスポンサー人脈について、「小此木事務所の秘書だった当時は、まだ課長になるかどうかだった企業の人たちがその後みな偉くなって、そのまま続いている」と述べている。
それは菅氏がまだ当選1回の新人代議士だったときの資金管理団体『横浜政経懇話会』の政治資金収支報告書(1998年)からもわかる。大手ゼネコンから設備会社、運送など150社近い企業が献金し、一団体で4600万円を集めていた。そのほとんどが横浜の企業(大企業の横浜支店を含む)だ。当時は金融危機の真っ只中で、世襲ではない新人議員としては突出した集金力だった。
政治資金が潤沢であれば、事務所経費や選挙資金に個人資産を充てる必要がない。ほかの叩き上げ議員と違って、議員報酬などを蓄財に回せるため、資産も増えていく。
いまや菅氏の政治資金収入は年間1億円を超え、自民党屈指の集金力を誇るが、「庶民宰相」の看板に似合わぬ資産家ぶりは、「横浜時代からのスポンサー」に支えられてきたといえる。
この新総理は若い頃からセレブをめざす“大企業の味方”だったのだ。
※週刊ポスト2020年10月2日号