国際情報

菅首相の「農家出身」という経歴が中国人に驚愕であるワケ

ダンボール工場で働いていた経験も

 安倍晋三前首相の突然の辞任により、9月16日に第99代内閣総理大臣に就任した菅義偉新首相。これまで、たびたび日本との対立や関係悪化が取り沙汰されてきた中国だが、国民は今回の新首相の誕生をどう受け止めているのか。中国の経済、社会に詳しいジャーナリストの高口康太さんが解説する。

 * * *
「この菅義偉ってどういう人なの?」
「漢字3文字だから中国人っぽい名前だよね(笑)」
「何でもいいけど、親中なのか反中なのかだけ教えてよ」
「みんな知らないの? 安倍政権の官房長官だよ。だから何も変わらないのでは」

 菅新首相の誕生を中国国民はどう受け止めたのか、少しでも知りたいと思い、中国の大手SNS「微博(ウェイボー)」を覗いてみたら、「この人だれ?」という反応が大半を占めていた。安倍前首相の辞任が突然だったこともあり、新首相のひととなりが知られていないのは当然とはいえ、「よく分からんが、日中関係のさらなる発展を期待する」くらいの、“期待を込めつつの態度保留”程度からスタートしてもらえないものだろうか。まあ、「よく分からないが、日本の新首相ゆるすまじ」という理由なきマイナススタートよりはマシなのかもしれないが。

 さて、「よく分からない」という中国国民に対し、中国メディアはどのような切り口で新首相の誕生を伝えたのか。中国の雑誌『環球人物』ウェブ版は「“農家の長男”菅義偉、首相の道を切り開く」との記事を掲載した。秋田の農家で生まれた「平民」が首相になるまでの人生を短くまとめている。一方で、菅新政権の展望については「安倍首相なき安倍政権」になるのではとの予測で、「多分何も変わらないのでは」という見立てのようだ。

 在日中国人作家の徐静波氏は、「菅義偉:出稼ぎ農民から首相までの道はどれほどの遠さか」と題したコラムを発表している。なるほど、菅新首相の生い立ちを知ると、「出稼ぎ農民が首相になるなんて!」と驚く中国人は多いだろう。菅新首相は農家出身に加え、上京後は一時期、ダンボール工場で働いた経歴もある。中国風に言うと、「農民工」(出稼ぎ農民)だ。今も、「きつい」「汚い」「危険」の3K労働の多くを担っているのは出稼ぎ農民たちである。以前と比べれば待遇は改善されて来たとはいえ、都市戸籍を持つ住民たちとの格差は未だに大きい。

 大学進学にあたってもハンデがあるうえ、名門大学に入学できたとしても、頼れるコネがあるかなどの格差は一生付きまとう。政権トップはというと、革命元勲の父を持つ「太子党(革命功労者の子弟による派閥)」の習近平国家主席と、北京大学卒のエリートである李克強国務院総理(首相)。出稼ぎ農民がここまで辿りつく道は見えない。毛沢東が農民の国を建国したはずなのに、気づけば農民が割を食う国になっているのが中国の現状だ。その中国的感覚から見ると、出稼ぎ農民から首相というサクセスストーリーは驚き以外の何者でもない。

関連記事

トピックス

精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《ショーンKの現在を直撃》フード付きパーカー姿で向かった雑居ビルには「日焼けサロン」「占い」…本人は「私は愛する人間たちと幸せに生きているだけなんです」
NEWSポストセブン
気になる「継投策」(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督に浮上した“継投ベタ”問題 「守護神出身ゆえの焦り」「“炎の10連投”の成功体験」の弊害を指摘するOBも
週刊ポスト
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン