韓国にはかつて、ニュースサイトを利用する際に実名を確認する「インターネット実名制度」があったが、表現の自由を侵害するとして2012年に廃止になった。ソルリとHARAが亡くなって以降、制度復活を望む声もあったが、賛否両論あり制度化まで至らず、各ニュースサイトは思い切ってコメント欄を閉鎖することにしたのだ。コメント欄が無くなってからは、悪プルはSNSなどに書き込まれるようになったが、コメント欄だと嫌でも目にしてしまうことが多かったため、閉鎖前に比べれば状況は少しずつ改善している。

 芸能事務所も、所属アーティストを守ろうと必死だ。韓国では、SNSで名誉棄損やセクハラをしたり、虚偽の事実を広めたり、悪意のある誹謗中傷などを行った場合、ファンがそれを見つけ次第画面をキャプチャーして、URLや投稿者のIDなどを芸能事務所にメール送信でき、芸能事務所の顧問弁護士がそれをまとめて検察に告訴している。また、大手芸能事務所では、所属俳優に定期的に心理相談を受けさせたり、不安な様子が見られた場合は心療内科を受診させるなど対策を講じており、最近ではうつ病を隠さず、治療を受けていることを告白する芸能人も増えている。

 ソウル市の真ん中を走る漢江(韓国北部を流れる河川)に掛かる20個の橋には、2011年から75台の公衆電話の形をした「SOSいのちの電話」が設置してある。「悩んだ時はまず電話して欲しい」というメッセージが書いてあり、電話を受けたカウンセラーが消防と警察に連絡し、すぐに救助できるよう連携している。2011~2019年の「SOSいのちの電話」にかかってきた相談は8113件で、10~20代が6割以上を占めた。投身直前に救助した件数も1595件にのぼる。

「SOSいのちの電話」によると、「自殺は個人的要因もあるが社会的・制度的要因が複合的に作用する社会問題である。最近コロナの拡散で経済的困窮、社会的距離を保つため人に会えないことから、不安とうつ、自殺衝動を訴える人が増えている」という。韓国の芸能界でも、子供の頃から合宿生活を送り、ダイエットのためだとして食事を制限し、過酷なトレーニングを積む厳しいマネージメントそのものが、うつ病の原因だと批判する意見も多い。こうしたシステムは近いうちに変わってくとみられるが、実効性のある対策が早く見つかってほしいものだ。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

【相談窓口】
「日本いのちの電話」
ナビダイヤル0570-783-556(午前10時~午後10時)
フリーダイヤル0120-783-556(毎日午後4時~午後9時、毎月10日午前8時~翌日午前8時)

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