新型コロナウイルスの流行拡大への警戒が高まった春先、SNSでのデマと口コミが発端でトイレットペーパーが店頭から消えた(時事通信フォト)

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 直接医師が「そんなに早く効果は出ない」と何度も説得し、やっと通院するようになったが、ある時を境に、子供の肌のコンディションが著しく悪化。子供は痒がるだけでなく痛みで泣き出すほどで、医師も看護師も、何が起きたのかと驚いていた。

「お母さんに改めて聞くと、ネット上で知った治療法を試した、というんです。それは、アトピー患者に劇薬を投与するような方法で、医療ネタを扱うまとめサイト上で記事になっていました。普段は温和な先生も流石に『医師を信じてください』とお母さんを叱っていましたよ」(大島さん)

 病院を訪れたが患者が、およそ医療とはいえないオカルトめいた治療法を実践していると白状する機会が増えたというのは、都内にある総合病院勤務の医師・佐々木逸朗さん(仮名・50代)である。

「腰痛に悩み通院しても治らないから、ネットに書いてあった治療法を実践したところ、立って歩けないくらいに悪化し、病院に担ぎ込まれたというお父さんもいます。重病患者やその家族が、藁にもすがる思いで、祈祷師や怪しい健康セミナーにはまってしまう、という事例は昔からありました。今はそれが、ネット上の『ニセ医療情報』に取って代わったのです」(佐々木さん)

 こうしたネット上の根拠が不明な情報を信じてしまう人たち、そして信じたい人たちに顕著なのは、標準的と言われる保健衛生や医療、科学的な説を無視または否定する態度だ。そして、その道の「プロ」よりも、ネットで見かけた誰かをなぜか信じてしまう。不確かな情報に対する批判への反論をしている様子をみると、どうやら、「プロ」は金儲けのために情報を発信しているから信用してはならない、と思い込んでいるらしい。その一方で、その分野を専門としない素人の情報は、金儲けを意図しない手垢もついていない「善意」の情報だから信用できる、という風にみなしている。さらに、自身は「情報強者」であると疑わないので、いくら冷静に矛盾や疑問を指摘しても、聞く耳を持たない。

 しかし、それは「自分の信じたいことしか信じない」もしくは「好きなもの以外は無視する」姿勢に他ならず、あまりに危険な態度だ。これがすすむと言動はおろか、思想まで偏ってしまい、身近な人間関係の破綻すら招いてしまうのだ。

 自分は、そんな陰謀論や非科学的な珍説など信じないから大丈夫、という人こそ注意して欲しい。ときどきSNSで拡散される、フェイクの「いい話」を信じて、軽い気持ちでシェアするなどしていないだろうか? 昨秋、ハリウッドスターの言葉としてSNSで拡散されたのは、数年前に成りすましアカウントが作成したニセ名言だった。実に多くの人が拡散に手を貸し、賛同し、デマだと分かった後も、いい話だからよいじゃないかという反応が少なくなかった。だが、これも実に危険行為だと言わざるを得ない。なぜなら、この考え方だと、科学的に虚偽であることが明らかであっても、たとえば歴史に存在しないことも、「いい話だから」という単なる主観によって広めてしまう。そして、広まった先で嘘が真実だと信じられてしまうと、真実を取り返すのはとても大変な作業になる。

「自分はそんなにバカじゃないよ──」

 今そう思ったあなたこそ、その余裕に付け込まれる可能性がある。

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