外交の専門家である2人

池上:それにしてもインド出身の方がこれだけ世界で活躍している理由はなんだとお考えですか?

ヴァルマ大使:インドは多様性のある国です。文化的背景が異なる人々との生活に慣れており、言語、食習慣、服装が違っていても、異文化に慣れるのは難しくありません。それに、インド人が海外に行っても、英語ができることはとても有利に働きます。英語が話せるインド人は、主に英語圏の国に移住し、そこで社会に同化していきました。社会に同化した後は、その一員となって、地元に根付いて生活するのです。

池上:今のモディ首相の政策は、特にヒンドゥー教徒からは大変支持を得ている一方で、どうもヒンドゥー教徒を偏重しているんじゃないか。そちらを重視しすぎていて、イスラム教徒はちょっとのけ者にされているのではないかというイメージがあります。またカシミール地方の自治を認めない、こういうやり方によって、インド国内の緊張が高まるという懸念を持っているのですが、それについてはどうお考えですか?

ヴァルマ大使:憲法も刑法も民法も、ヒンドゥー教徒と非ヒンドゥー教徒は同じ扱いです。インドではヒンドゥー教徒の人口が最も多いことは事実で、これは変えられるものではありませんが、このことが分断を起こす原因だと見るべきではないでしょう。皆、同じ権利を持っています。ただし、憲法に基づく社会的権利の特例はあります。これは、少数派のコミュニティが独自の文化に基づく自治を持つことを認めたものです。シク教徒、ジャイナ教徒、パールシー(ゾロアスター)教徒、イスラム教徒は、それぞれの文化に応じた決まりを、それぞれ持っています。しかし、宗教は関係なく、みんなインドの市民です。権利もありますが義務もあります。義務は守るべきだと思いますね。

池上:インドというのはお話を聞くと本当に多種多様で、その多様であることが大変な問題を引き起こす部分もある。一方で非常に発展する可能性もある。多様性をどう生かしていくのかというのがインドにとって、実に大変な課題ですね。

ヴァルマ大使:大変なことだったかもしれませんが、私たちはインドで、多様性の中で長い間一緒にくらしてきました。インド文化というのは現在存在しているすべての文化の総体です。一部はヒンドゥーの文化であり、別の一部はイスラムの文化、また他の一部はパールシー(ゾロアスター教)の文化。すべての文化の要素が含まれています。神はいかなる文化も異なるように創造したわけではありません。すべての文化は、人間性の価値を認め、人類と平和を尊重しています。すべての文化には共通点があります。

関連記事

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン