「男女」にはデータがあるが、「LGBT」はカウントされない

村木:今回のような「同性愛者が増えると少子化が進む」的な発言に物申すときに、「じゃあ、少子化が進まない証拠はあるの?」って聞かれることがあるんです。あの発言の直後にフィンランド大使館の公式アカウントが、フィンランドではレズビアンカップルの4割に子どもがいるというツイートをしていました。狙ったようなタイミングでしたが、すごく心強かったです(笑)。それを言えるというのは、きちんと国が統計をとっているということ。でも日本では、いったいどれだけの同性カップルがいるのか、誰も把握できてないんです。

治部:確かに「男女」ならデータがありますもんね。東日本大震災のあと、復興関連で岩手などに取材に行きましたが、行政が男女別のデータを持っていないと、どうなったかっていうところがわからない。「東日本大震災女性支援ネットワーク」という女性支援に関わる人々で作った団体が行なった調査では、避難所で女性や子どもが性犯罪被害に遭った事実が明らかになりました。この調査をもとにNHKなどの報道があり、問題の存在が一般に知られるようになっています。やはり調査データは問題把握、改善の第一歩といえます。また、途上国では、津波などがあったときに女性のほうがたくさん亡くなっていることがあります。それは夫がOKしてくれないと買い物にも行けないような宗教的規範があるからなんですが、それも数字が見えて初めてわかる。データって命にも関わることかもしれないですね。

村木:ちょうど今、国勢調査が行なわれていますけれども、10年前から国勢調査で同性カップルを集計・公表してくださいとの声が上がっていながら、国がなかなかそれを認めてくれないという問題があります。例えば、「女性×女性」で、「世帯主×配偶者」と書いて、「子どもがいる」と書けば、集計も可能なわけですよね。そういう同性カップルの実態を、きちんとカウントしていただきたい。同性カップルだけでなく、トランスジェンダーで子どもがいる人もけっこう多い。そういうところがまだ社会的に見えてないんです。

治部:勝間和代さんがカミングアウトしたとき、いわゆる異性婚をして子どもができて、そのあとで同性のパートナーができる方っていうのもいらっしゃるんだなぁとわかって。おっしゃるように、同性カップル世帯の統計は必要ですよね。今は行政も企業もLGBTへの関心は高いですから。

【プロフィール】治部れんげ(じぶ・れんげ)/ジャーナリスト。1997年、一橋大学卒。日経BP社にて経済誌記者。2006~07年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2018年、一橋大学経営学修士課程修了。現在、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員、東京大学大学院情報学環客員研究員、一般財団法人女性労働協会評議員など。著書に『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館新書)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)ほか。二児の母。

【プロフィール】村木真紀(むらき・まき)/認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」代表。1974年茨城県生まれ、京都大学総合人間学部卒業。社会保険労務士。日系大手製造業、外資系コンサルティング会社等を経て現職。LGBTQと職場に関する調査、講演活動を行なっている。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー・2016チェンジメーカー賞」受賞。著書に『虹色チェンジメーカー』(小学館新書)がある。

◆構成/後藤純一  撮影/国府田利光

NPO法人「虹色ダイバーシティ」の村木真紀氏

ジャーナリストの治部れんげ氏

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン