スポーツ

柔道家・松本薫 相手を陥れた「マインドコントロール」作戦

世界ランキング1位で臨んだ2012年のロンドン五輪では、日本選手団金メダル第1号に(写真/時事通信社)

 対戦相手をにらみつけて戦うことから、ついた異名は「野獣」、一方で自らを「凡人」と称する柔道家・松本薫(33才)。一体彼女はどうやって野獣となり世界と戦い、金メダルを獲得したのか──。

 帝京大学に進学し、目標の五輪出場を叶えるため、まずは大学3年生で日本一になるという目標を立てた松本。しかし、当初の計画より1年早い、大学2年生のときに国内のトップを決める講道館杯(2007年)で優勝した。さらに、2008年のアジア選手権(韓国・済州島)での優勝を皮切りに、世界大会へと着実に進出する。

 後にロンドン五輪で金メダルを獲得し、リオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得した松本に話を聞いた。

 * * *
 予定より1年前倒しで国内トップになれたことで、“世界”が見えてきたのですが、ここからは、世界の天才が相手です。天才は努力をすれば勝てるのですが、私は体も小さいし、得意の大技があるわけでもない凡人です。技を磨き、練習量を増やすだけでは天才には勝てません。

 おまけに私が戦う57kg級は、女性の標準的な体重で、競技人口がいちばん多いのです。その中で、天才に真正面からぶつかっても勝てるわけがない。ならばどうするか? 戦い方を変えるしかないと思った私は、相手にマインドコントロールをかける作戦を編み出したのです。

 日本人でも海外選手でも、人間がいちばん怖いのは何だと思いますか? それは強いとか賢いとかではなく、何を考えているかわからない、不気味な存在です。日本人は海外選手に比べてポーカーフェースといわれますが、それではダメ。「こいつは不気味だ」と、思ってもらわないといけません。そこで、私はイメージ作りに取り組んだのです。

 試合前はあえて笑顔で「ハーイ、一緒にご飯食べようよ、次、当たるね!」と海外の選手に声をかけ、一緒に食事をして、「明るいやつだな」と思われるように振る舞いました。そして、試合で畳に上がったときには別人のように相手をにらみつけながら、口角をあげて、不気味な笑みを浮かべる。

 すると案の定、「なんだ、こいつ!? 不気味!」と、相手が狙い通りに混乱してくれ、試合をコントロールできるようになり、自分より強い相手にも勝てるようになったんです。それには、4年の歳月が必要でした。

 その間、海外のメディアからは、「アサシン」や「殺し屋」などと呼ばれるようになり、批判もされましたが、すべては金メダルのためと思っていた私は、「しめしめ」と思っていたんです。

関連記事

トピックス

結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
野球人・江夏豊が球界に伝えておくべきことを語り尽くす(撮影/太田真三)
【江夏豊インタビュー】若い才能のある選手のメジャー移籍は「大いに結構」「頑張ってこいよと後押ししたい」 もし大谷翔平と対戦するなら“こう抑える”
週刊ポスト
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン
11月下旬に札幌ススキノにあるガールズバーで火災が発生(右はInstagramより)
【ススキノ・ガルバ爆発】「男は復縁の望みをまだ持っていた」火をつけた男は交際相手A子さんを巻き込んで死のうと…2匹の犬を失って凶行に
NEWSポストセブン
再婚
女子ゴルフ・古閑美保「42才でのおめでた再婚」していた お相手は“元夫の親友”、所属事務所も入籍と出産を認める
NEWSポストセブン
54歳という若さで天国に旅立った中山美穂さん
【入浴中に不慮の事故】「体の一部がもぎ取られる」「誰より会いたい」急逝・中山美穂さん(享年54)がSNSに心境を吐露していた“世界中の誰より愛した人”への想い
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《真美子さんのバースデー》大谷翔平の “気を遣わせないプレゼント” 新妻の「実用的なものがいい」リクエストに…昨年は“1000億円超のサプライズ”
NEWSポストセブン
自宅で
《来年は全国まわるからすごく楽しみ》急逝・中山美穂さんが“最期のコンサート”でファンと歌った「ラストソング」
NEWSポストセブン
「働き方」への思いについて語った渡邊渚アナ
「局アナ時代は“労働は罰”」「パリ五輪会場で出会った外国人への憧れ」元フジテレビ渡邊渚アナが語る「日本の働き方」への思い
NEWSポストセブン