同資料によると、現在、NHKと未契約等(契約していない、またはテレビを設置していない)世帯は1372万世帯(総世帯5523万世帯のおよそ2割)で、契約のための営業活動に〈多大なコストが必要(訪問要員に係る経費305億円)〉で、〈粘り強く対応することによるクレームやトラブルの発生〉がある。そこで、「受信設備の設置届出義務」と「未契約者氏名等(居住者情報)の照会」を導入すれば、届け出をしない人に対して公的機関などで氏名を照会し、宛名を「○○様」とした案内や通知を「郵送」で送ることができるようになる。それでも届け出がない場合は訴訟を提起するとしている。
要するに、今までNHKの訪問員が各戸を回って催促していたのを、郵送に変えて経費削減するためにこの2つの制度を導入したいと解釈できるだろうか。
しかし、〈政府から独立した公共放送事業体〉を自認するNHKが、「テレビを買ったら届け出をさせろ」「公的機関から個人情報を入手させろ」という要望をすれば、反発が起きるのは当然である。何より驚くのは、そうした反発が起きるのは火を見るより明らかなはずなのに、総務省の有識者会議で堂々とこんな要望を出したことだ。
NHKがズレてる理由は「エコーチェンバー現象」か
NHKが映らないようにするアダプター「イラネッチケー」を開発した筑波大学システム情報系の掛谷英紀准教授はこういう。
「エコーチェンバー現象(仲間内だけで議論しているうちに、特定の信念が増幅・強化されていく現象)の一種でしょう。法律で受信料支払いが義務化されているから、その延長で、受信料徴収のためには公的機関から個人情報を入手するのも認められると考えたのではないでしょうか。ネット上では炎上していますが、案外、NHKの人たちは猛反発が起きていることに気づいていないのかもしれません。それくらい肌感覚がズレていないと、こんな要望なんて出せません」
識者の多くが、「受信料徴収に血道を上げるより、放送をスクランブル化して、見たい人だけがお金を払って見る方式にすべき」と提言しているが、NHKはそれにも耳を貸さない。