NHKのサイトにある「よくある質問集」というページでは、「なぜ、スクランブルを導入しないのか」という問いに対し、〈スクランブルをかけ、受信料を支払わない方に放送番組を視聴できないようにするという方法は一見合理的に見えますが、NHKが担っている役割と矛盾するため、公共放送としては問題があると考えます〉などと回答している。
だが、現在のデジタル放送では、災害時の緊急放送や国会中継などはスクランブルを解除するという運用が技術上可能で、公共放送としての役割はじゅうぶん果たせるはずだ。それでもなぜ、NHKはスクランブル化に抵抗するのか。
「NHKとしての利益を最大化することが彼らの目的であって、スクランブル化すると契約しない人がかなり出てきて、収入が激減するからです。今は民放を見たいだけの人にも、NHKを“抱き合わせ販売”しているので、巨額の収益が出ているだけです」(掛谷准教授)
戦後にテレビが普及したのはNHKのおかげだが、現在は民放のおかげでテレビが売れ、NHKは利益を上げていると指摘できるのだ。NHKの要望通り、「届け出制の義務化」や「未契約者の個人情報照会」が認められれば、今後、テレビを買わない人が増加して、民放各局は広告収入が減り、経営を圧迫されることになるかもしれない。
そうなれば、民放関係者はもちろん、視聴者も怒りを爆発させかねない。
「もし届け出が義務化されたら、『NHKが映らないテレビを設置した』と届け出をしようと思っています(笑)」(掛谷准教授)
すでにAmazon等のネット通販では、「イラネッチケー」と同じ仕組みのNHKが映らなくなるアダプターが販売されている。これら2つの制度が認められると、いよいよ視聴者の反乱が始まるかもしれない。
●取材・文/清水典之(フリーライター)