極道コメディの主人公たちが「縛られた人間」ということも重要だ。彼らは、仁義を重んじ、体を張って人を助ける「任侠」という絶対的なルールや己自身で定めた道から、決してはずれない。そのためには一般人には理解できないやせ我慢や遠回りも当たり前。力が入り過ぎて、コケたりもする。
『任侠学園」』は、「一、カタギに手を出さず 二、勝負は正々堂々 三、出されたものは、残らず食う」の誓いが堂々と壁に掲げられ、組員全員が社会奉仕に走り回る。しかし、生徒からは「ヤクザはちょっと…」と距離を置かれ、「おとしまえって何ですか?」「Vシネマって?」「ググッていいですか?」と言われて困惑する。
制約の中で登場人物が右往左往したり、誤解からとんでもない事態に発展するのは喜劇の基本だ。一般人が主人公ならありえない荒唐無稽な展開も派手なアクションもオールオッケー。そんな中に誰かのために必死になる彼らの姿にぐっとくる瞬間もある。極道コメディは、怖い顔を持つベテラン俳優たちの振り切った演技とズッコケぶりに安心して笑える、ファンタジーなのである。