悩むスカウト「身体が万全なら2桁勝てる」

 東海大学のエース山崎伊織投手は、「故障がなければ、今年の目玉選手の一人だった」とどのスカウトも口にする。1位指名は確実で、重複もありえた。

 MAX153kmのストレートに加え、スライダー、カットボールと変化球も一級品。高校時代は兵庫・明石商で吉高壮(日体大)と「ダブルエース」と呼ばれ注目されたが、ベスト8に進出した2016年センバツ甲子園は登板なし。その時点では背番号1番をつけMAX146kmを記録した吉高が一歩先行していた。それでも、「将来性では山崎」という声も多かった。

大学日本代表でも活躍した東海大学の山崎伊織投手(時事通信フォト)

大学日本代表でも活躍した東海大学の山崎伊織投手(時事通信フォト)

 東海大進学後、高校時代からの右肘故障の影響でスタートは出遅れたが、2年生の春から台頭。3年時には春秋のリーグ戦でMVPを受賞する活躍を見せ、大学JAPANにも選出されている。

 しかし3年生の秋に再び右肘を故障。当初はヤンキース田中将大が肘の故障の際に取り入れたことで日本でも知られるようになった治療法であるPRP注射での回復を目指していたが、なかなか痛みが引かず、肘にメスを入れるトミー・ジョン手術を決断する。

 この故障については、山崎が“凄い”投手であるがゆえに抱えた問題という見方もある。首都リーグを観戦し山崎を何度も取材しているスポーツライターはこう話している。

「投げる技術や球の質が一級品なのに対して、身体の線が細すぎて、自分の動きに耐えられない。だから故障を繰り返すのではないでしょうか」

 快速球を生み出すしなりすぎる腕が、同時に、肘に負担を掛けてしまう。山崎のスライダーを「伊藤智仁(元ヤクルト)級」と絶賛したスカウトがいたが、故障と背中合わせというところまで本家と似てしまった。

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