今年も逸材争奪戦の繰り広げられる(2019年のドラフト会議/時事通信フォト)
山崎は現在もまだボールを握ることはなく、リハビリとトレーニングの毎日。トミー・ジョン手術は完全復帰まで一年以上を要するだけに、もはや大学での登板は諦めるしかない。そのため目標としていたプロ入りを凍結し、社会人入りが内定していた。
ところが一転、ドラフトが直前に迫った10月になってプロ入りの意思を表明。プロ志望届を提出した。突然の進路変更の理由は、同じように右肘痛で苦しんでいたチームメイトのドラフト候補・小郷賢人投手が、復帰を果たしプロ入りを目指している姿に強い刺激を受けたからだという。
「身体が万全ならプロで2桁勝てる」と評価される逸材だけに、スカウト陣も一気に色めき立った。
とはいえ、少なくとも来年は戦力として計算できない。回復具合にもよるが、本当の意味で完治と呼べるようになるのは、2~3年先のことかもしれない。そうなると、現状の戦力に余裕のある球団でなければなかなか手を出しにくくなってくる。当然、手を引く球団も出てくるだろう。場合によっては、指名漏れということもないとは限らない。
なかには「どこか特定の球団と密約があるのでは。そうでなければ、この段階での志望届提出は不自然」と訝るスカウトもいる。だが、プロ志望届を出した以上は12球団すべてに指名する権利があるわけで、欲しければ指名して権利を得るしかない。
獲得を狙う球団は、様々なリスクを考えると、「少しでも下位で指名したい」というのが本音のはず。だが、おっとり構えていて他球団に先に指名されてしまったのでは実も蓋もない。逆に、事前に「獲るぞ」と煽っておいて、他球団に上位指名の枠を使わせてしまうという駆け引きもあるだろう。
そうした様々な要素が絡み合った結果として、2位3位といった上位に浮上することも十分考えられる。あるスカウトはこう言っていた。
「山崎の良い時のピッチングを見ていますからね。どうする? と聞かれたら、そりゃ『獲りましょう』と言いますよ」
どこの球団が、どんな順位で指名してくるにしても、水面下の駆け引きはギリギリまで続くはずだ。
