ハスラーとは「稀有なライバル関係」?
そんな特質を確かめながらの600kmドライブであったが、顧客にとって気になるのは最大のライバルであるスズキ・ハスラーとの比較であろう。これについては互いに優劣があるが、それ以前に商品の方向性自体が両者、思ったより異なっているというのが率直な印象だった。
タフトの最大のライバル、スズキ「ハスラー」(時事通信フォト)
スズキ「ハスラー」の運転席
まず、実用性ではハスラーの圧勝。ホイールベースはどちらも2460mmだが、室内の前後長はカタログスペックだけでなく実効寸法でも明らかにハスラーのほうが上。加えて後席はタフトが固定式であるのに対してハスラーはスライド式で、4人+荷物という使い方も含め、日常ユーズからレジャーまでを幅広くこなせるというフレキシビリティの高さではハスラーの圧勝である。
タフトは後席を固定式にするなら、もう少し後席を前に寄せて荷室を増やしたほうがよかったかもしれない。
タフトのリアシート。足元空間は広いが座面が低く、タッチもやや平板な印象
タフトはリアシートバックを起こした状態では荷室がやや狭い印象
一方で、アドベンチャー風味やスペシャリティ性という点ではタフトが優越する。何といっても先に述べたサンルーフ標準装備の威力は絶大。また、ドライブフィールがクロスカントリー4×4ライクという特別感もある。1、2名で山奥のネイチャードライブをどんどんやりたいというユーザーにはうってつけだ。
アドベンチャー風味を楽しめるダイハツ「タフト」
このように両者のキャラクターに結構な違いが生まれたのは、スズキがジムニーというクロスカントリー4×4の本命モデルを持っており、ハスラーとニーズをハッキリと分担できるのに対し、ダイハツはタフト1本で行かなければならないというそれぞれのお家事情によるところも大きかったものと考えられる。
見方を変えれば、タフトとハスラーは一見似たところを狙っているようだが、その実、キャラクターは結構違うため、ガチンコ勝負というよりは案外、共存共栄できる稀有なライバル関係になるかもしれない。
自動車ビジネスでは先発モデルが開拓した市場にフォロワーが現れるのが常というものだが、フォロワーが先発とまったく同じような性格のものだと、その競争は単に優劣を競うだけのつまらないものになる。
同じカテゴリーでの競合であっても、ハスラーとタフトのようにアイデアや狙いが明確に違うと、顧客にとっては純粋に選択肢が広がる。買う側に対してはそれこそ好きなほうを買えばいいと言える。こういう健全な競争こそがクルマという商品選びを楽しいものにするのではないかと、改めて思った次第であった。
ダイハツ「タフト」(Gターボ)のフロントグリル