スポーツ

正田耕三 史上初のゼロ本塁打首位打者は自慢の足でもぎ取った

1987年のセ・リーグでは首位打者争いが三つ巴の接戦に(写真/共同通信社)

1987年のセ・リーグでは首位打者争いが三つ巴の接戦に(写真/共同通信社)

 いよいよ大詰めとなるプロ野球。タイトル争いも盛り上がるが、過去に首位打者をかけたこんな名バトルがあった──。

 1987年のプロ野球セ・リーグでは、巨人の篠塚利夫(現・和典)と中畑清、中日の落合博満、広島の正田耕三が熾烈な首位打者争いを演じた。まず中畑が脱落し、続いて最終戦無安打の落合が篠塚に1厘及ばず全日程を終了。唯一、篠塚を上回る可能性があった正田は最終戦でヒットを放って篠塚に並び、滑り込みで同率の首位打者を獲得した。当時、正田とチームメイトだった達川光男氏が語る。

 * * *
 前年にリーグ制覇した広島が2年連続の優勝を目指したシーズンで、チームが個人タイトルのアシストをするのが難しい年だった。僕もチーム防御率を改善するため自分のことで精一杯だった。

 四つ巴の首位打者争いは最後までもつれましたが、正田は最終戦でセーフティバントを決めて打率首位の篠塚に並んだ。ベンチも休ませたり出したりと協力したが、自分の長所である足を生かしてもぎ取ったタイトルと言えるじゃろうね。

 彼は広島伝統の猛練習をこなし、重いすりこぎ型のバットでゴロ打ちに徹した。当時、本塁打ゼロの首位打者は初で、スイッチヒッターの首位打者もプロ野球史上初の快挙と騒がれた。左打ちを始めて2年後のこと。露骨な敬遠合戦などが残る時代に、自分の力で首位打者になったのだから大したもんだよ。

 今は昔と違って醜いタイトル争いがない。

 例えば10月5日の阪神-巨人戦では、巨人先発の桜井が、同僚の岡本と本塁打王争いをする阪神の大山と真っ向から勝負して、バックスクリーンに打球を叩き込まれました。これこそプロ野球のあるべき姿。この先も正々堂々とした勝負によるタイトル争いが楽しみじゃね。

※週刊ポスト2020年11月6・13日号

正田とチームメイトだった達川光男氏(写真/共同通信社)

正田とチームメイトだった達川光男氏(写真/共同通信社)

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン