阪急の阪神“吸収”は村上ファンドの阪神株買い占めから始まった
大阪だけではない。阪神電鉄の西の端、神戸・三宮でも阪急ブランドの攻勢が目立つ。阪急神戸三宮駅には、建て替え中の「神戸阪急ビル東館」が2021年春に竣工する。地上29階、高さ120mのタワーで、オフィス、ホテルなどが入る予定になっている。駅舎と一体になった構造で、以前から阪急神戸三宮駅では阪急電車がビルに吸い込まれるように走ることで知られていたが、そのイメージは新ビルでも継承される。
そこから三宮交差点を挟んで阪神神戸三宮駅がある。駅の上には、かつてそごう神戸店があり、阪神・淡路大震災では一部が損壊し、その後は震災からの復興の象徴として親しまれてきたが、昨年10月からは「神戸阪急」として営業している。ビルの側面には「阪急」の文字が大きく躍り、その下に「阪神電車三宮駅」とある。地元では、いまや復興のシンボルではなく、阪神が阪急の軍門に下った象徴とも言われている。
神戸港を見下ろす六甲山でも、かつては山頂付近に阪急系列と阪神系列のホテルが並んで競い合っていたが、阪神系の「六甲オリエンタルホテル」は閉鎖され、阪急系の「六甲山ホテル(現在は六甲サイレンスリゾートとして別会社が運営)」が生き残った。阪神系列が運営するスキー場やアスレチック、植物園も阪急阪神HDに飲み込まれてしまった。
ビジネスに盛衰はつきものではあるが、大阪で、神戸で、六甲山で、阪急は阪神の牙城を揺り動かしているように見える。そしてついに阪神最大のブランドともいえるタイガースも阪急に飲み込まれるのか……。「阪急の山」となった六甲山から吹き降ろす六甲おろしがタイガースファンの身に沁みる冬になるかもしれない。
『週刊ポスト』(11月6日発売号)では、阪急vs阪神の長きにわたるライバル関係を、様々なエピソード、証言、図解で詳報する。