官僚のための働き方改革でさらに残業増

 過重な労働によって心身を壊し、自殺や突然死をする官僚は決して少なくない。人事院のデータによれば、霞が関で2017年度にうつ病などの精神疾患で長期病休をした人の数は3841人。これは、全職員の1. 39%を占める。民間企業ではこれが0.4%だというから、いかに官僚が過酷な職場で働いているかが分かる。同じく、官僚の死亡率も民間企業の約3倍になるという。

「若い人が突然亡くなったという話はよく聞きます。職員がうつ病になって休職しているなんて話は、どの部署でも掃いて捨てるほどありますよ」

 この異常な勤務環境の改善を望む声は、官僚やその家族だけでなく一般の国民からも上がりはじめている。それらを受けて、就任直後の河野太郎行政改革担当相兼国家公務員制度担当相は「官僚の働き方改革」に着手した。まずは官僚の勤務実態を把握するため、全省庁の職員に在庁時間の記録を付けるよう指示を出したが、今のところT氏はその動きを手放しで喜んでいない。

「勤務環境の改善は大歓迎です。ただ、その結果を短期間で求められていて、その業務に追われ状況は悪化しています。半年から1年をかけてやるような改革を数週間から1か月でやらなくてはならず、本来の仕事に加えてですから、結局そのせいで今現在、大量の残業が発生しています」

 冒頭で述べたように、今、東大生の官僚離れが進んでいる。数年前には、T氏の部下になるはずだった東大卒業予定の学生が、「同級生と起業することにした」と省庁内定の辞退を申し出てきたそうだ。「その方が彼の人生には良いと私も思います」とT氏は話す。

 勤務環境の改善が明確に示されないかぎり、今後も東大卒のキャリア官僚の数は減少の一途を辿るはずだ。優秀な人材の流出は霞が関全体の質の低下につながり、国民に大きな不利益をもたらすだろう。もはや一刻の猶予もない。

【池田渓】
 1982年兵庫県生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学生命科学研究科修士課程修了、博士課程中退。フリーランスの書籍ライター。共同事務所「スタジオ大四畳半」在籍。近著に『東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)がある。

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