「いずれにせよ、来年1月20日まではトランプ大統領の任期。保守的なトランプ支持層は確実に残っていて、かなり多くの人がトランプ氏に共鳴しているのも事実です。バイデン氏が『いがみ合いはやめよう』と言っても耳を貸さないでしょう」(中岡さん)
共和党支持の「赤い州」と民主党支持の「青い州」の亀裂は、今回の大統領選をきっかけに、さらに大きくなると中岡さんは予想する。
「アメリカではいま『冷たい南北戦争』という言葉が多用されていて、すでに2つの国に分かれていると言ってもいい。バイデン氏が勝利宣言で『団結しよう』と言ったのは、すでに国家が分断されているからにほかなりません」
地下壕がない家は買わない
アメリカでは開票直前から、トランプ支持者とバイデン支持者の衝突による暴動を予想し、護身用の銃や実弾の売り上げが急増。社会不安の懸念が高まっている。その不安が的中し、アメリカ国内で「内戦」が勃発するのではという指摘もある。国際政治経済学者の浜田和幸さんが言う。
「トランプ支持の保守派とバイデン支持のリベラル派の対立は明確になっており選挙前からすでに内戦に突入していると言ってもいい。サフォーク大学の調査によれば、国民の75%が『内戦を非常に危惧している』と回答したほか、住宅購入を考える国民の6割以上が『内戦から身を守る地下壕がないと住宅を買わない』と回答しているほどです」
保守派には、たとえば「ミリシア」と呼ばれる極右武装勢力があり、トランプ政権になってから大っぴらに活動するようになった。選挙中もバイデン陣営の車列に妨害を加えたり、バイデン氏の立て看板を破壊していたという。10月にはミリシアの勢力がミシガン州知事(民主党)の誘拐を企てて逮捕されたが、ほかにも同州の警察官襲撃や全米各地での内戦を計画していたことが明らかとなった。一方、バイデン派も穏やかではない。「アンティファ」と呼ばれる勢力をはじめ、極左武装勢力を抱えているのだ。
「バイデン派の一部も、選挙結果によっては『一斉蜂起してワシントンを封鎖』『ニューヨークのトランプタワーを焼き討ちする』といきり立っていたといいます。スーパーマーケットチェーンのウォルマートは全米の半数の店舗で銃砲店の展示方法を変え、銃器が目立たないようにして暴動に加担しないよう自主規制したほどです」(浜田さん)
ニュースでは伝わらない緊迫感にアメリカが包まれているという声もある。ニューヨークに住む日本人駐在員の妻はその様子をこう語る。
「トランプ支持者たちが暴発して銃乱射事件を起こすのではという憶測が飛び交い、出歩かないようにしています。コロナ禍の影響と相まって、スーパーの棚からはトイレットペーパーのほか長期保存がきくパスタが消えるなど、さながら非常事態です。1か月くらいは籠城する覚悟で備えが必要だと考えています」
さらに物騒な噂もある。アメリカで大規模テロが起きると一部で報じられているのだ。