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東向島の優しい酒屋店主が作った角打ち空間でホッとする一杯

「立ち飲みのついでに親の介護のことをいろいろ教えてもらっているんですよ。先日は実家の電気の配線まで手伝ってもらってね。『サンダルはどこで売ってるの?』なんてことまで相談しますからね。ここは私の駆け込み寺ですよ」(50代、鉄道関係)

 そんな客のよろず相談も請負う『岩田屋商店』は、東武スカイツリーライン・東向島駅から隅田川方面に延びる大正通り、昔ながらの八百屋や弁当屋が並び、昭和の香りが残る商店街に位置する。

「駅からの帰り道にふらっと寄れる自分の居場所があったら幸せでしょ。あいさつが聞こえる町っていいじゃないですか。酒屋が地域の起点となって、誰もが暮らしやすい町に変えたかったんです」と、長年福祉の仕事に携わってきた3代目店主の岩田謙一さん(38歳)が篤い志で昨年の4月、酒屋に角打ちスペースを作った。

 創業は昭和10年。謙一さんと共に両親(父・雄次郎さんと母・千惠子さん)、テキパキと働く伯母の訓子(くにこ)さんも一緒に切り盛りしている。

 さまざまな種類の酒が並ぶ中、レジの手前に置かれた味噌樽が目を引く。

「戦後は酒が高くて売れなかったからねぇ、昔は煮干しやワカメなんかの乾物や、味噌や醤油の量り売りをして生計を立てていました」(訓子さん)。

店自慢の越後味噌は、近所の幼稚園や小学校にも卸しているそうだ。

「この辺りの子はみんなうちの味噌で調味した味噌汁を飲んで育ったんですよ」(謙一さん)

 実は謙一さんは、21歳のときに交通事故に遭い、生死を彷徨った経験があるという。

「社会福祉士を目指していた学生時代、4トントラックに跳ねられて緊急搬送されたんです。後で医師に聞いたところ、路上に倒れている僕を、たまたま通りがかった救急救命士の方が応急処置してくれたそうなんです。そのおかげで一命をとりとめました。名前もわからない人ですが、いつかお礼を言いたい。2週間意識不明でしたが奇跡的に助かった。それからは、今日できることを全力でやると決めました」(謙一さん)

 大学卒業後、謙一さんは社会福祉団体でずっと働きながら酒屋を手伝ってきたが、退職して昨年から正式に3代目を継いだ。現在は酒屋の仕事と並行して墨田区民生委員・児童委員や高齢者相談員として地域の福祉にも従事している。

長年福祉の仕事に従事している店主(写真左)が、町の人の居場所として角打ちを始めた

長年福祉の仕事に従事している店主(写真左)が、町の人の居場所として角打ちを始めた

自慢の味噌樽(写真中央)から、味噌の計り売りもしている

自慢の味噌樽(写真中央)から、味噌の計り売りもしている

「どうしたら人が喜ぶかを常に考えていますね。いつも人のために仕事をしている人なんですよ」と謙一さんのパートナーである舞さんの謙一さん評。ときどき舞さんも店に顔を出すのだという。

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