いやいや、そうじゃない。「中穴に和田竜が跨るぞ。こいつは狙い目だ!」と気持ちが弾けた結果なのである。
たとえば、最近凝っている「ワイド6点買い」。軸には勝てそうな馬を据え、穴もまじえて6点ヒモをつけるのだが、軸馬に迷うことがままある。このときにそれほど深く検討せずに、「和田竜が巧く乗るだろう」と軸に据えていたのだった。
マイランキングの上位20位以内の回収率を見ると、100%超えは松山、幸、池添、横山武、北村友。一方で低いのは北村宏30%、武豊33%、M・デムーロ2%。ランキングは100位まであるから、20位以内は贔屓筋なのである。
名手がなんとかしてくれる。データはそんな甘い考えに冷水をぶっかける。贔屓頼みを猛省すれば、「騎手別成績一覧」は宝の山になる……かもしれない。
開く財布は自分のもの。嗜好は大事である。だがそこで思考を止めず、きちんと馬を見極めたい。
【プロフィール】
須藤靖貴(すどう・やすたか)/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号