マコネル院内総務もトランプ氏と同じくデマで有権者を扇動し始めた(AFP=時事)
二つ目の議席は、共和党のジョニー・アイザクソン上院議員の引退を受けた補欠選挙だったが、同氏から後継指名されたケリー・ロフラー氏に民主党のラファエル・ウォーノック氏が挑んで、こちらも大接戦に。ウォーノック氏は、故マーチン・ルーサー・キング氏が務めていたエベニーザーバプテスト教会の牧師。ロフラー氏はビジネスマン。
ジョージア州は何十年にもわたって共和党が支配してきたところで、候補者の経歴を見ても、どちらも共和党が有利なはずなのだが、最近は若者やマイノリティーが北部から州都アトランタ周辺に多数移住してきて、リベラル派の勢力が増している。とはいえ、1988年以降に行われた7回の決選投票で民主党が勝ったのは1998年の1回だけ。今回も、まだ共和党が勝つ可能性のほうが高いと見られている。
最大の不確定要素はトランプ大統領だ。同氏は12月5日にアトランタを訪問すると発表した。大統領選挙では、同州で246万票、49.3%の票を獲得したのだから、トランプ人気も結構ある。普通なら現職大統領の応援は力強いはずだが、報道では共和党の2人の候補はあまり歓迎していないという。トランプ氏が支持者に決戦投票のボイコットを訴えるのではないかという観測も出ている。大統領選挙に抗議して、トランパー(熱烈なトランプ支持者)たちが棄権してしまうと、共和党候補はどちらも惨敗するだろう。
慌てた共和党のミッチ・マコネル院内総務は、「民主党独裁が完成すると、彼らは首都ワシントンとプエルトリコを州に格上げし、それぞれ2議席の上院議員枠を作る。その4議席を独占する目論見なのだ」と訴えて、アメリカ人の「ねじれているほうが良い」という気持ちを掻き立てようと必死だ。もちろん、この主張に根拠はない。トランプ発言と大差ないデマゴーグである。
すでにNEWSポストセブンでリポートしたが、この決選投票には、共和党は天才的選挙参謀のカール・ローブ氏が参戦し、民主党は元ニューヨーク市長のブルームバーグ氏が支援に乗り出すと見られている。筆者の情報では、ローブ氏はトランプ氏のアトランタ入りを阻止したいと考えているようだ。そして、ブルームバーグ氏は行かせたいのだという。なんとも奇妙な「ねじれ」が起きている。それくらい「トランプ来襲」の影響は大きいということだ。12月5日にトランプ氏が熱狂で迎えられるのかブーイングを浴びるのか、有権者に共和党への投票を呼び掛けるのかボイコットを煽るのか、それによって情勢が決まるだろう。