のび太としずかちゃんの結婚式シーンも(c)Fujiko Pro/2020 STAND BY ME Doraemon 2 Film Partners.
「映像に声を当てる“アフレコ”とは逆に、プレスコとは、先に音声を収録し、その声に合わせて映像や絵を作る方法です。俳優さんは絵に合わせて声を入れるのではなく、自由にお芝居をすることができ、より演技力が作品に反映されます。
宮本信子さんと言えば、夫である伊丹十三監督の作品で、緩急自在な芝居を見せ、非常に高い演技力をお持ちの女優さんです。『STAND BY ME ドラえもん 2』では、短いセリフの中で、気弱なのび太くんを大きな心で包み込む優しさと、しっかりと見守る強さという二つの違うベクトルを非常に上手く表現されています。大人のび太を演じた妻夫木さんも『宮本さんの声を聞いただけで涙が出てくる』と話していましたが、声質の温かさを含め、プレスコという技法により、宮本さんの演技力が際立っているように感じます。
また妻夫木さんも、前作に引き続き2度目の大人のび太ということもありますが、前作はスケジュールの関係でほぼアフレコだったのが、今回はしっかりとプレスコで行ったということです。『頼りないけれど純粋な心を持っているのび太くんが、大人になった姿』という人物像がより想像できる芝居を見せてくれています。
同じのび太役を演じる、子役の川原瑛都くん、レギュラー声優の大原めぐみさん、妻夫木さんの3人の声のトーンも一貫性があり、違和感がなかったのも、感情移入しやすかったです」
キャストたちの名演と、それを最大限に生かすための収録方法が、過去、現在、未来をつなぐ絆の物語を生み出したようだ。
●取材・文/原田イチボ(HEW)
おばあちゃん役を演じた宮本信子
大人ののび太を演じたのは妻夫木聡
しずかちゃんのウェディングドレス姿がまぶしい(c)Fujiko Pro/2020 STAND BY ME Doraemon 2 Film Partners.