ライフ

芸術は倫理や政治とは別のもの 本居宣長に学ぶ「表現の自由」

本居宣長の歌論から「表現の自由」を読み解く(写真:Lebrecht/AFLO)

本居宣長の歌論から「表現の自由」を読み解く(写真:Lebrecht/AFLO)

 芸術作品や漫画、小説、映画、ドラマなど、様々な創造物に対して、倫理観や政治信条を理由に“けしからん”と展示や流通を差し止めようとする動きが、SNSなどで度々起きている。それに対して「表現の自由」を守れという声も出るが、その「自由」とはどんなことなのか。評論家の呉智英氏が、本居宣長の歌論から、表現の自由について考えた。

 * * *
 私が住む名古屋の町角に「表現の自由を守りぬく。」と大書したポスターが目につく。日本共産党のポスターだ。私の評論分野の一つはマンガだが、マンガはこれまでしばしば「表現の不自由」を強いられてきた。警察、婦人団体、教育団体などがその主役で、共産党系文化人もこの風潮に同調的だった。共産主義の本家ソ連、支那、北朝鮮では、そもそも表現の自由など存在しない。

 それがなぜ唐突にこんなポスターをと思ったが、併記された「知事リコール運動反対」の一句で理由が分かった。昨年物議をかもした「あいちトリエンナーレ」を巡って、県知事リコール運動が起きたからである。これを批判しているのだ。この運動については別途論じるとして、ここでは表現の自由そのものについて考えてみたい。

 表現の自由の本質的根拠って一体何だろう。憲法や人権宣言を挙げる人が多いだろうが、それは法律という「制度」である。これが改廃されたら根拠にはならない。つまり本質的ではないのだ。

 我々は健常者であれば足を左右交互に出して歩く。障害があれば足をひきずって歩く。どう歩こうと「自由」である。この自由は法律や制度を根拠にしていない。もともと本質的に自由なのだ。

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン