究極の夢は「沖縄に鉄道を敷く」こと
森岡氏にとって、手がけるテーマパークの集大成となりそうなのが、USJ時代から構想を温めながら、在籍時には実現が叶わなかった、沖縄北部での一大テーマパークプロジェクトである。開園は2020年代中盤を想定。当地での環境アセスメントの結果次第でパーク内のアトラクションは変わってきそうだが、沖縄でのテーマパークに並々ならぬ情熱を注ぐ理由とは何なのか、聞いてみた──。
「沖縄の地には、無限大の可能性を感じています。なにせ沖縄から飛行機で3時間圏内に3億人近い人口がいます。アジア圏は富裕層もどんどん増えており、マーケットとしても物凄く大きい。
また、3時間圏内というのも絶妙なところで、この時間を超える移動となると、敬遠する人が一気に増えてくるのです。レジャーに出かける際の時間的な分岐点が3時間。USJも、東京から行くとなると、かろうじて3時間圏内です。
沖縄のプロジェクトは、環境アセスメントが終了してからでないと事業の全容はまだ固まりませんが、当地の豊かな森林を保全して作るテーマパークにする計画です。
大自然での本能を揺さぶられる体験という点に照らすと、ネスタリゾート神戸に比べて、沖縄では海を越えて広域から人を呼び込まなければいけない分、ネスタよりももう少し濃い、いわば“狂人”により近い世界観を出していくことになると思います。いずれにしても、国内の方はもちろん、アジア全域から『ここは行っておかないと』と言っていただけるものを作ります。
当地での私の究極の夢は『いつか沖縄に鉄軌道を引きたい』ということです。もともとは沖縄鉄道があり、那覇市内にはモノレールが走ってはいますが、沖縄北部と南部は鉄道が通っていません。鉄道でつなぐことができれば人や物の往来が飛躍的に高まり、沖縄北部の貧困問題解決にも資するものになると確信しています。
マーケティング精鋭集団「株式会社 刀」オフィスにて
【プロフィール】
森岡毅(もりおか・つよし)/1972年生まれ。神戸大学経営学部卒業後、P&G入社。ブランドマネージャーとして日本ヴィダルサスーンの黄金期を築いた後、2004年にP&G世界本社に転籍。ウエラジャパン副代表を経て2010年にUSJ入社。CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、執行役員、マーケティング本部長を経ながらUSJ再建に尽力。2017年に「株式会社 刀」を設立し、森岡流マーケティング手法“森岡メソッド”を多くの企業に移植している。著書は『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』ほか多数。12月14日に『誰もが人を動かせる!あなたの人生を変えるリーダーシップ革命』(日経BP社)を発売。
●取材・文/河野圭祐(経済ジャーナリスト)
●撮影/内海裕之