ドイツのメルケル首相は12月9日の連邦会議で、これまでにないほど強い口調で感情を込め、頭を大きく振り何度も拳を振り上げながら、国民に向けクリスマス前の自粛を熱く訴えた。イギリスのジョンソン首相も12月19日会見を開き、コロナの変異種の拡大でロンドンを再びロックダウンすると宣言。陽気な印象のあるジョンソン首相だが、語気は強いが淡々とした低い声で、身振りも手振りもなく厳しい表情を見せた。視覚や聴覚情報がいつもと違うことでメッセージ力は高まっていた。
一方の菅首相といえば、「Go Toトラベル」の全国停止を訴えた時もいつもとほとんど変わらない。立ったままで手振りもない。少し目を大きく開け、語気を強めていたかなというぐらいで、差し迫る緊迫感も緊張感も伝わってこない。いつもと同じ冴えない表情で背中を少し丸めた首相が登壇しても、「何か」を感じさせる見た目のインパクトもない。
メラビアンの法則とともに作用しているのが、見た目のインパクトの判断に影響を与える「適応的無意識」だ。適応的無意識は一瞬の判断や直観的な判断であり、意識より先に思考や行為を決定すると言われる。人が一瞬見ただけで相手の感情やどういう人かを判断してしまうのも適応的無意識によるものだという。
ジョンソン首相のように険しい表情で髪を少し振り乱し、背筋を立てて会見場に表れる。登壇する時は早足で、正面を向いたら大きく息を吸い数秒間しっかり前を見てから話し始める。メルケル首相のように抑揚やテンポをつけ、拳を何度も振り上げながら感情を込めて訴える。そんな菅首相を見ることができたら、菅政権のコロナ感染対策への印象も変わるのではないだろうか。