もちろん、がんや脳血管疾患など、継続的な治療を要する病気においては定期的に通院することが不可欠だ。だが、とりわけ慢性疾患において、日本では「過剰医療」が指摘される。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏が指摘する。
「現行の診療報酬体系では2週間に1度、診療すれば慢性疾患の手技料が加算点としてプラスされることもあり、多くの医師は『2週間後にまた来てください』と患者に伝えます。
しかし本来ならば、1か月~1か月半に1度経過観察すれば十分という慢性疾患は少なくありません。しかも現在はコロナに院内感染するリスクがあるため、治療に支障のない範囲で、不要な通院を差し控えることが求められます」
加えて上医師が指摘する“頻繁な通院”によるリスクは「薬」だ。
「通院回数とともに薬の処方が増えると、患者のリスクも増大します。もちろん、治療のために適切な薬を飲むことは大切ですが、中には不必要な薬まで処方するケースが少なくない。しかも高齢になるほど複数の病院にかかって、薬の量が増えるケースが増加します。
特に高齢者に多いのは、整形外科、内科、皮膚科、泌尿器科などをかけ持ちするケースで、各診療科で似たような薬が出るリスクがある。薬の副作用は2種類のかけ合わせしか調べないので、多剤併用すると副作用リスクの増大が懸念されます」
※週刊ポスト2021年1月1・8日号