お酒は強いほうではないという
――テイスティングはすぐできるようになるものなんですか?
ひぐち君:いやいや! 国や品種、ヴィンテージ、ワインの表現などを当てなければいけないから、かなり難易度は高いと思います。この資格って合格率約30%ですし、飲食業界の資格ではいちばん難しいとぼくは思います。
冷蔵庫に20本くらいワインを入れて、全てを毎朝テイスティングです。飲むと酔ってしまうので、香りをかいで口に含んで味わいを確認して吐き出す。これを仕事から帰ってきてまたやっての繰り返しです。3日くらい経つとワインの香りが抜けるので、買い足しながら続けました。
たとえばシラーという品種があって、黒コショウの香りがするのが特徴の一つです。でもぼくがかいでもそんなにおいはしないので、「どこが黒コショウの香りなんだろう?」と首をひねっていたんですけど、試験の2週間前に黒コショウの香りがわかるようになって「これか!」と。一度わかるようになるとかぎわけられるんですよね。そうやってコツコツ体に叩き込みました。
順調だったのですが、2次試験1週間前に奥さんに風邪をうつされて、においが全くしなくなったんです。すぐに病院に行って「注射でもなんでもいいから治してください!」って懇願して、試験3日前になんとか復活しました。ドタバタでしたね。
――そもそもお酒を全く飲めなかったそうですが、酒量は?
ひぐち君:以前は居酒屋に出てくるワイン2杯でダウンしていました。それが今では、1人で2、3本飲めます。先日数えたら年間1400種類くらい飲んでいました。以前、ワイン関係の仕事終わりにボルドーのメドック格付け1級~5級まで61シャトーをいくらでも飲んでいいですよ、と言われたことがあるんです。1級だと1本10万円するので、飲み比べができる貴重な体験だと、1時間で61杯全て飲んでいました(笑い)。二日酔いもありませんでした。良いお酒って後に残らないんですね。
――高いワインと安いワインは、全く味が違うもの?
ひぐち君:それは難しいです。3年前に『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、2000円のシャトー・モン・ペラ、5万円のオーパス・ワン、10万円のシャトー・ラフィット・ロートシルトの利き酒をしたんです。10万円のワインはすぐにわかりましたが、5万円と2000円を間違えました(苦笑)。美味しさって値段だけじゃないんですよ。漫画『神の雫』の主人公も、シャトー・モン・ペラをほめてますからね。番組が終わって出題したソムリエの方に「意地悪な問題出してすみません」って謝られました(笑い)。
10万円のワインがすぐわかった理由は、香りの複雑性です。高級ワインはいろんな香りが入っているので飲まなくてもわかりました。熟成しているので味もまろやかになります。