2021年も、まず国民と政府が一番に取り組むべき課題はコロナ感染をいかに抑えて国民の命と生活を守るかだろう。『週刊ポスト』(2021年1月4日発売号)では、2021年に国民の意見を真っ二つに分断しそうな22のテーマについて、それぞれの分野の専門家が2つの意見に分かれて大論争を展開している。
ここでは、コロナ対策について、感染防止を優先すべきか、経済復興を優先すべきかというテーマで「感染防止優先」を訴えた埼玉学園大学経済経営学部の相沢幸悦・教授が明かした興味深いデータを紹介する。相沢氏は、週刊ポスト誌面では、このデータによらず感染防止の後に経済対策を講じるべきだという論を展開している。また、同特集では元厚労省医系技官の木村盛世氏が、コロナの致死率がそれほど高くないことを理由に経済優先の意見を述べている。以下、相沢氏の主張だ。
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経済学的に言うと、ソーシャルディスタンスなどの対応は経済合理性に適っているという研究があります。米ワイオミング大学のチームによる推計ですが、ソーシャルディスタンスなどの対策を講じた場合とそうでない場合を比べると、講じたほうが社会的損失(純便益)は5兆ドルも改善するというのです。
コロナ禍によるGDPの損失は、何もしない場合は6.49兆ドルで、対策を講じると13.7兆ドルですから、表面上は、やはり何も対策せずに経済を稼働させたほうが損失は小さいことになります。しかし、コロナ感染に伴う人的資産の損失は、何もしない場合は21.8兆ドルにもおよぶのに対し、対策を講じると9.4兆ドルで済むというのです。これを合計すれば、対策を講じたほうが社会的損失は少ないという推計になります。