国内

母を亡くした弘兼憲史「僕は安楽死で気持ちよく死にたい」

弘兼氏も島耕作もまだまだ現役だが(時事)

弘兼氏も島耕作もまだまだ現役だが(時事)

 漫画家の弘兼憲史氏(73)は、代表作『課長島耕作』で自分と同年齢の団塊世代サラリーマンを主人公に、男の出世や恋愛模様を描いてきた。現在、70代となった島耕作は相談役として活躍中だが、団塊世代にも確実に人生の最後のステージが近づいている。これも代表作である『黄昏流星群』では中年・熟年・老年の恋愛をテーマにしており、生涯輝き続ける人生が弘兼作品の魅力のひとつだ。ちなみに弘兼氏の妻である漫画家の柴門ふみ氏は、2020年に大ヒットしたドラマ『恋する母たち』の同名原作で、40代女性たちの不倫を赤裸々に描いた。夫妻はバブル時代からコロナ禍の令和に至るまで、作品を通じて常に日本人の「半歩先」を見せることでファンを惹きつけている。

 社会人としても男(あるいは女)としても、最後の時まで「現役」でありたいというのは、おそらくすべての人の願いである。しかし、現実はそう理想通りにはいかない。『週刊ポスト』(2021年1月4日発売号)では、国論を二分する22のテーマについて、各界論客が激論を戦わせている。弘兼氏は「安楽死に賛成か反対か」というテーマで「賛成論」を述べている(反対論は横浜市立大学准教授の有馬斉氏)。「生涯現役」を描き続ける弘兼氏は、実は同誌取材の直前に実母を亡くしていた。記事では収録されなかった亡き母への思いと、自らも安楽死を望む考えを改めて語った。

 * * *
 2025年には、我々すべての団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、2030年頃になると次々と死んでいきます。そうすると、今のコロナ禍のように、病床が足りなくなって、本来なら病を治して社会復帰するはずの人たちのための病院を寝たきりの老人が占領するような現象が起きるでしょう。「長寿国」というのは、裏を返せば若者に社会保障の負担をかける社会です。だから僕は、「安楽死」を真剣に検討する時代だと思っています。

 うちのおふくろが10日前に死んだんですよ(取材は2020年12月21日)。緩和ケアのために最後は入院しましたが、がんでずっと意識不明でした。医師からは「胃ろう(チューブで胃から直接栄養を摂取する医療措置)をしましょう」と言われましたが、姉たちと話して、痛みをとってあげるのが一番だろうということで、「やめましょう」「このまま逝かせましょう」と決めました。最後に会って東京に戻ってきたら、その3日後に亡くなりました。

 僕は終末期に痛みがあるなら早く逝かせてあげたほうがいいと言っていたのですが、他の家族は「おばあちゃんをもっと生きさせてあげたい」と言う。「もっと生きてほしい」というのは、もちろんその人のために言ってるのだろうけど、本当にその人のためになっているのかはわかりませんよね。本人の意思より家族の希望が優先されるというのは、エゴといえばエゴなんです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

イベントに出演していたジャングルポケットの斉藤
《性的暴行で書類送検》ジャンポケ斎藤が事件直後に出演していたイベントのスタッフが明かす“リアル”な姿「1人で喋り続けていた」「ステージ上で子供たちと戯れていた」
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「手錠と目隠しのつもりで…」父・田村修被告が語った瑠奈被告との“SMプレイの練習”「娘は被害男性とのプレイを楽しみにしていると思った」【ススキノ第4回公判】
NEWSポストセブン
V9を経験したレジェンドOBたちが阿部慎之助監督にエールを送る
《盟主復権への道》阿部巨人“12年ぶり日本一奪還”の条件 V9時台のレジェンドOBたちが語る「キーマン」「短期決戦の采配・戦術」
週刊ポスト
『めざましテレビ』を卒業した三宅正治アナ
『めざましテレビ』卒業の三宅正治アナ 送別会にライバル『ZIP!』から“花束&水卜麻美アナからの手紙”のサプライズ 軽部アナは現役続行で30年越えへ 
女性セブン
(瀬戸サオリのインスタグラムより)
《ロケバスで性的暴行の疑い》ジャンポケ斉藤、それでも妻・瀬戸サオリが夫に寄り添う切実な理由「一方的な行為ではない」
NEWSポストセブン
性的暴行疑いで書類送検されたお笑いコンビジャングルポケットの斉藤慎二
《連絡しても反応がない》タレント女性に不同意わいせつのジャンポケ斉藤慎二、周囲が懸念していた「感情の浮き沈み」
NEWSポストセブン
お笑いトリオ「ジャングルポケット」の斉藤慎二と妻・瀬戸サオリ
《家族と別居状態だったジャンポケ・斉藤慎二》妻は「一部事実と違う報道」インスタで言及の“決断”、不同意わいせつで書類送検
NEWSポストセブン
俳優、タレント、番組MC、育児と多忙な日々を送る二宮和也
《11月3日にデビュー25周年》嵐“6つの企画”が発表されても簡単ではない「グループとしての活動再開」 二宮和也は結成記念日にコメントなし 
女性セブン
石破茂・首相の短期決戦の賭けはどんな結果となるか(時事通信フォト)
【10.27総選挙289全選挙区緊急予測】自民党が「53議席減」、自公でも過半数割れの衝撃シミュレーション結果 新閣僚3人も落選危機
週刊ポスト
田村瑠奈被告と父・修被告
「俗に言う“お持ち帰り”をされた」「最後の行為でゴムを取られて…」父・田村修被告が証言した“瑠奈被告と被害男性のプレイ詳細”
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《「根拠のない情報」発言の真相》宮内庁の幹部たちが最も否定したいのは悠仁さまの「進学先」ではなく、「成績不振報道」だった 東大農学部とは“相思相愛”か? 
女性セブン
ヤマハ発動機の日高元社長(共同、時事)
《娘に切り付けられ退任》ヤマハ発動機社長、事件前に目撃されていた“父娘の散歩” 名古屋出身も「俺はトヨタよりこっちのほうが…」見せていたバイク愛
NEWSポストセブン