横綱・白鵬は場所直前に新型コロナ感染が判明した(時事通信フォト)
「辞めてもらうしかない」
横綱審議委員会の第14代委員長(2015年1月~2017年1月)を務めた守屋秀繁氏(千葉大名誉教授)はこう憤る。
「もう横綱として土俵を務めるのは厳しいのではないか。仮に3月場所に出たとして、3~4日相撲を取って引退宣言せざるを得なくなるでしょう。陸奥親方も、(2019年9月に)亡くなった先代の井筒親方(元関脇・逆鉾)から引き継いだだけで、自らが鶴竜を育てたわけじゃないから、本人が“今場所は(相撲を)取れない”といったら認めるしかないのではないか。親方も大関まで務めたとはいえ、相手は横綱で遠慮があるのだろう。
ただ、横審が『注意』を決議し、“1月場所で結果を出すように”と申し渡したにもかかわらず、鶴竜はそれを先延ばしにしたわけです。本来なら退場ものだ。辞めてもらうしかないと思いますよ。場所後には厳しい決議をするべきだと思います」
成績不振の横綱に対する横審の決議で、「注意」より重いのは「引退勧告」のみだ。過去には暴行事件を起こした朝青龍、日馬富士に対して決議された2例しかない(日馬富士は引退後だったため「引退勧告相当」の決議)。それほどまでに事態を重く見ているということだ。
昨年12月に日本国籍を取得した鶴竜は、引退後に親方として協会に残る道筋が見えている。前出・協会関係者が説明する。
「年寄株は亡くなった師匠の遺族から『井筒』を継承する段取りになっている。先代の元関脇・逆鉾が亡くなったあと、旧・井筒部屋の建物は解体されてしまったが、鶴竜が引退してしばらくしたら陸奥部屋から独立して再興するものとみられている。
部屋の立ち上げには億単位の資金が必要だが、タニマチから祝儀が集められる引退相撲がコロナ禍で開催できない状況だけに、少しでも長く現役に残りたいだろう。横綱は休場しても月給300万円で、1場所延命すれば2か月で600万円の収入になる。それだけ国技の最高位には価値があるということだが、休場が続けば批判を受けるのは当然でしょう」
※週刊ポスト2021年1月29日号