絵を描くように情景を思い浮かべながら聞く
もう1つ重要なのは、聞き手も話し手の思い出の世界を共有することだ。
「思い出を夢中で話している人の頭の中には、その風景が見えているはず。聞き手にとってはまったく知らない世界ですが、同じ風景の絵を描くつもりで、その材料となることを話に沿って聞いていきましょう。
たとえば“その祭は夜やるの?”“誰と一緒に?”“神輿は出た?”“浴衣は着た?”などと、一緒にその世界を楽しむ。共に泣き共に笑う!」
そしてリズムも大切だ。タイミングよく相槌、共感。
「“すごーい!”“それは大変だったでしょう”“えっ、そのとき10才くらいでしょ?”など。話に弾みがついて、思い出の世界を共有していることを実感できます。もっと話したい、聞いてほしいという気持ちになります」
こんな心の動きが脳も活性化させるのかもしれない。
しかし高齢者の場合、特に認知症などがあれば話し方もスムーズとは限らない。話があちこち飛んだり、世代が違うとわからないこともある。日常の中ではいら立ったり、興味が失せて会話が途切れてしまったりするものだ。
「聞き書きで大事なのは、人生の先輩から何かを学ばせてもらおうという気持ち。自分にとって未知なことにも好奇心をもって聞く姿勢です。“初めて聞きました。教えてください”“知らなかった! 勉強になりました”と。
また長い人生をすべてもれなく聞こうというのは最初から無理なことです。自分の理解できるポイントから。たとえば“運動会の思い出”といった1テーマでよいのです。小さな風呂敷を一つひとつ敷いて広げていくように、丁寧に聞いていきましょう」