ああ

「話したいことを聞く」「その人らしい話し言葉で」が大切なポイント

話し言葉を生かして書く小田流の聞き書き術

 話を聞きながら、録音したりノートに書き留めたりして最終的には原稿をまとめて本(冊子)にする。数ページを簡単に綴じたものから、写真なども盛り込み数十ページに製本したものまで、思い思いの一冊ができる。

「ぼくはできるだけ相手のしゃべり言葉で書くようにすすめています。聞き書きは人生の物語と、その人の生きた証を形にするものだからです」

 この手法へのこだわりは、小田さんの肩書に初めて大きく【聞き書き】と記された著書『幇間の遺言』(集英社)の語り手、悠玄亭玉介師匠との出会いがきっかけだという。

「師匠は粋な遊びの世界を生き抜いた由緒正しき下町の芸人で、病床に1年近く通って話を聞きました。とにかくおもしろかった。初日に“あんたなんだい、いきなり病院に来て話聞かせろって冗談じゃねーや”って(笑い)。これを普通の文章に置き換えては、 おとっつぁんらしさが全然出ない。それでしゃべり言葉で原稿を書いた。聞き書きが世に認められた代表作です」

 しゃべり言葉はまるで文字からイキイキした声が聞こえてくるような勢いがある。これが聞き書き本を受け取る本人や家族にとって大きな癒しになるという。

「しゃべり言葉が大事とはいえ、録音したそのままを書き起こすのではダメ。場合によっては話し手の言葉通りでなくてもよいのです。本当は言いたいけれど言えなかったこと、うまく言葉にできなかったことも、愛情を持って話し手の気持ちを推し量り、その人になり切って書く。言い換えや補足も聞き手(書き手)の裁量。かえってそれが本人や家族の心に響くものになったりします」

 聞き書きをしても傍から忘れてしまう認知症の人にもおすすめ。話したことを忘れても、聞き書き本が“記憶の番人”となり、開けばいつでも自分の物語と出会えるのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
宮崎あおい
《主演・大泉洋を食った?》『ちょっとだけエスパー』で13年ぶり民放連ドラ出演の宮崎あおい、芸歴36年目のキャリアと40歳国民的女優の“今” 
NEWSポストセブン
悠仁さまが2026年1月2日に皇居で行われる「新年一般参賀」に出席される見通し(写真/JMPA)
悠仁さまが新年一般参賀にご出席の見通し、愛子さまと初めて並び立たれる場に 来春にはUAE大統領来日時の晩餐会で“外交デビュー”の可能性も、ご活躍の場は増すばかり
女性セブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
会社の事務所内で女性を刺したとして中国籍のリュウ・カ容疑者が逮捕された(右・千葉県警察HPより)
《いすみ市・同僚女性を社内で刺殺》中国籍のリュウ・カ容疑者が起こしていた“近隣刃物トラブル”「ナイフを手に私を見下ろして…」「窓のアルミシート、不気味だよね」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト