閑古鳥が鳴いていた湾岸タワマンが次々完売

 それは、混迷の民主党政権が終わって1年ほど経ったころだった。第2次安倍政権の1年目。その年の3月には黒田東彦氏が日本銀行の総裁に就任。市場にマネーを大量投下する異次元金融緩和が始まって約半年ほどが経過しようとしていた。

 IOCのロゲ会長から「TOKYO 2020」というカードが示されたとき、安倍総理や猪瀬東京都知事(肩書はいずれも当時)が席から飛び上がって狂喜する映像を記憶に焼き付けている方も多いと思う。

 東京のマンション市場では、その翌日から大きな異変が始まっていた。それまで閑古鳥が鳴こうかという有様だった、湾岸エリアで販売中のタワーマンションのモデルルームに見学の予約が殺到。押すな押すなの大盛況のうちに、販売住戸は次々に完売。市場は一気に五輪祝祭ムードに包まれた。

 さらに五輪開催決定後に売り出されたタワマンは価格がそれでまでの1.2倍程度に上昇。それでもスムーズに完売していった。今では2013年当時のおよそ1.5倍にまで相場観は上昇している。

 しかし、その間に日本経済が大きく成長したわけではない。ましてや、個人所得は増えていない。日本全体として住宅の価格が上昇したかというと、部分的には上がったが、全体としては低迷していると言っていいだろう。

 つまり、五輪開催エリアである東京の湾岸エリアやステイタス性の高い城南、あるいは人気が集まった神奈川県川崎市の武蔵小杉エリアのような限られた地域で、マンションの価格が異様に高騰したのだ。

 確かに、アベノミクスによって日本経済は民主党時代のような低迷は脱した。雇用も改善して、人手不足が叫ばれるようになった。新卒の採用戦線は売り手市場へと変わった。

 ただ、2度にわたる消費税率の引き上げや公共料金等の値上げなどによって、個人所得は実質的に下がったと言っていい。多くのサラリーマン諸氏の暮らしは、実感を伴って好転しなかったのではないか。それにもかかわらず、東京の湾岸や城南、武蔵小杉エリアのマンション価格はアベノミクス以降で約1.5倍に上昇したのである。

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