マンション価格暴落は「王様が裸に戻るだけ」

 仮に五輪が開催されないとなると、そのような祝祭ムードは一気に吹き飛んでしまう。五輪開催決定後に、約1.5倍となったマンション価格の相場観は短期間のうちに元の「1.0」に戻ったとしても不思議ではない。そうなったとしても、それはただの自然現象である。しかし、傍目には「暴落」と見えるかもしれない。

 むしろ今後深刻化するコロナ不況の影響で「1.0」を切ることさえ十分にあり得る。なんといっても、この7年間に日本経済は大して成長していないばかりか、個人所得は実質的に減少しているのだ。一部エリアのマンション価格が高騰したこと自体が不自然だったのである。

五輪中止なら不動産市場に沸き起こった祝祭ムードも吹き飛んでしまう(AFP=時事通信フォト)

五輪中止なら不動産市場に沸き起こった祝祭ムードも吹き飛んでしまう(AFP=時事通信フォト)

 本来ならば低下しているはずのマンション価格を押し上げてきたのは、金融政策史上ありえない手法と常識をはるかに超える規模で実施されてきた異次元金融緩和である。湾岸エリアではそこに「五輪開催」というお祭り気分の空気感が加わって、加熱したと言っていい。

 五輪開催中止という決定がなされれば、多くの人が“王様は裸だった”ということに気づくだろう。その後はただ、王様が裸に戻るという現実が待っているだけだ。

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