ムカつくほどではない、絶妙なダメ男ぶりは専売特許か
古い記憶にあるのは『生まれる。』(TBS系・2011年)の林田太一役。気弱な性格で5人兄弟の長男であり、養子。デザイナーの仕事をしていたけれど、トラブルに見舞われて留置場に入れられてしまう。それでもなんとか家族愛のおかげで、普通の生活に戻っていたという、少し屈折した役。『どS刑事』(日本テレビ系・2015年)では、タイトル通りどSとバディを組まされる、ヘタレな刑事役。
そして『モンテ・クリスト伯 ─華麗なる復讐─』(フジテレビ系・2018年)の南条幸男役で、ダメ男ぶりの最高値を極めた。警察に虚偽の通報をして、友人・柴門暖(ディーン・フジオカ)が捕まるように仕向ける。この時点で腐っているけれど、暖の彼女とちゃっかり結婚。劇中での職業は売れっ子俳優、でも下積み時代には香港マフィアから借金をしていたこともあった。最終的に警察に逮捕された南条は、大倉さんが演じた歴代ダメ男の中で、消化不良になるほど一番のクズだった気がする。
大倉さんが演じるダメ男役の特徴は、最終的に「あいつ悪いやつじゃないんだよね」と憎めないことである。その絶妙な雰囲気を醸し出しているのが大倉さんであり、テレビを消すほどのムカつきぶりではない。これが定期的にダメ男役の巡ってくる理由なのかもしれない。
そして歴史(?)は今回の剣崎元春へと続く。第二話の放送でタイムスリップをした彼が、理想としていたセレブリティな人生に進んでいく。ただ過去に戻っても元春には、以前の記憶がしっかりと残っている。逃げたつもりの嫁とも再会してしまい、さてこれからどうなる? というのが、今後の見どころ。思わぬ形でリスタートできた人生だけど、これが幸せなのかどうかを、これから彼がたどっていく。
そんなドラマを見ていてふと思ってしまった。「自分なら何年前に戻って、人生をやり直すのか」。そんなことを妄想するあたり、私もダメ女かもしれない。元春よ、気づかせてくれてありがとう。第三話の放送を待ちわびております。
【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。