何より、円さんを悩ませたのは“音”だ。
「この病気は、全神経が過敏になるんです。何かが落ちた音でも恐怖を感じるのに、ドラムの音なんてもってのほか。だから音ができるだけ聞こえないようにパネルを立てたりと、工夫して続けました」
死ぬ思いでライブを続けながら、病気の原因も探し続けた。発症してからしばらくして知人に、大阪の入野医院めまいセンター所長の荻野仁先生(現・萩野耳鼻咽喉科院長)を紹介してもらい、そこでようやく「パニック障害」と診断された。
好きなことに夢中になると恐怖を忘れる
「診断が下りたときはホッとしました。ああ、やっぱりおれは病気やったんや、と」
治療薬(ソラナックス)をのみ始めてからは症状も回復。発症から4か月後にはテレビの仕事にも復帰し、パニック障害を公表した。
「発症前は、ただがむしゃらに仕事をしていたけれど、いまは、ここに仕事を入れるとこの週は疲れるからやめとこうとか、このロケはきついからこの曜日にしようとか、調整して仕事ができるようになりましたね」
ミュージシャンとしての活動も、円さんにとっては大きなモチベーションだ。
「症状がきついときも、ライブで歌い続けたことは本当によかった。舞台に立っても、最初は怖くてたまらない。けどね、大きな声で歌っているうち、不思議なもんやね。どんどん高揚してくるというか、好きなことだから夢中になれて恐怖心を忘れられるんですよね。それに無事に終えられたら自信になる。それを少しずつ積み重ねて、前に進んできた感じです」
いまも多くの雑誌やテレビ番組などで、自身のパニック障害の経験を伝え続けている円さん。語ることで発症当時のつらさを思い出し、体調が悪くなることもあるが、「これからも続ける」と胸を張る。
「かつてのぼくみたいに絶望している人に、“こんな自分でよかった”と思える希望がある、と伝えたいんです」
そのためには、自分の限度を知ることが大切だという。「ご自愛ください」という言葉の通り、まずは自分をいたわることが大切なのだ。
※女性セブン2021年2月11日号