京都大学名誉教授で呼吸器科の泉孝英医師
現場では医師会の責任を問う声も出ている。
「私たちは公立や公的病院が担う急性期・救急医療を補完する『社会医療法人』の民間病院のため、頑張って患者を受け入れますが、受け入れられる民間病院は他にもあるのだから、医師会は切羽詰まる前に準備しておくべきでした」(生野医師)
社会医療法人・相澤病院(長野県松本市)理事長の相澤孝夫医師はこう訴える。
「私の病院では重症患者3床、中等症患者15床を確保して、コロナ患者を受け入れてきました。症状が良くなってきた重症患者の転院先が見つからないので、中等症患者用の病床も確保しておかなければいけません。
通常診療の患者さんの手術は、延期できるものは1~2か月延期してもらっています。コロナ患者の対応にあたる人員を増やして回していかなければ持ちません。日本医師会が先導して都道府県の行政とも連携を取り、地域の医療機関の役割についてもっと話し合うべきです」
兵庫県赤穂市民病院など複数の病院に勤務する病理専門医の榎木英介医師も口を揃える。
「本来、医師会が都道府県の医師会に指示を出し、公的病院と地域の診療所などの役割分担を調整すべきでしたが、開業医主体の医師会は、自分らが損をする選択はしません。僕も医師会に加入していますが、上層部は勤務医の意見を聞かず、政治力が強いのに、民間病院や開業医のコロナ患者受け入れの陳情は見えてこない。医師会が消極姿勢では、コロナ患者を受け入れるベッドは最少限にならざるを得ません」
※週刊ポスト2021年2月12日号