2度目の緊急事態宣言が再発令されてから2週間。店舗のシャッターに張り出された休業のお知らせ(イメージ、時事通信フォト)
コロナ禍だ、自粛だ、緊急事態宣言だと言っても多くの人は出社して働いている。工事現場の作業員や交代制の工員などエッセンシャルワーカーを中心に、少ないながらも木村さんの店に来たという。
「うちは食べるに困ってませんから。息子は公務員だし、娘も九州に嫁いで片づいた。妻と二人で暮らすには何も困ってない」
そして降って湧いたのが協力金バブルだ。困っていない木村さんに、頼んでもいないお金が入ることとなった。その額、1日6万円。
「恥ずかしい話、今の売り上げなんて月平均で1日6万もないです。コロナ関係なく、コロナの前からたいした稼ぎなんかありません。それが1日6万円もくれるわけで、売り上げで1日6万円ってことですもんね。忙しい時で1日40人、天気が荒れてりゃ1日数人ですよ。そんな店に6万円なんて、雑な話だなと思います」
売り上げ扱いですからね、経費にしても何を買えばいいやら
小さな飲食店の原価などたかが知れている。賃貸でない木村さんなら光熱費や食材の仕入れを見繕っても4割ないだろう。飲食店の原価のほとんどは人件費と店舗の賃料だ。他人を雇ってない木村さん、奥さんのみ専従者にしている。もちろん店舗部分も按分で経費にしている。こういった第1種事業の飲食店、ごく小さな自営業の大半は個人事業税も僅か、下手をすると年間所得290万円以下で税金免除だ。まして個人事業税はもちろん固定資産税も按分で経費にできる。いや、仮にできなくても、してしまう。それが零細自営業の現実だ。税務署も暇ではない。はした金なんか目もくれないし万が一、指摘されたところで微々たるもの。課税所得の捕捉率が自営業者6割、農林水産業4割に対してサラリーマンは9割。この不公平な「クロヨン」は21世紀も健在だが、自営業や農家を責めるのはお門違い、許してきたのは日本国政府である。
「年金と家賃収入があるからやっていけるような店です。この辺はそういう年寄りの店が多いです。だから1日6万円も入るなら喜んで休みますよ。でもほとんど税金払ってない身で、そんなお金もらってよいやら。深夜遅くまでやってたわけじゃないし、ちょっと酒出す時間と閉店早めただけ、それで大金頂けるなんてね」
控えめに語る木村さんだが、実際は年金に駐車場収入もあるわけで木村家トータルでは黒字、もちろんそれなりに個人事業税も所得税も払っているだろう。木村さんの言いたいことは、あくまで年寄りの道楽でしかない小さな店にまで1日6万円配るのは雑ではないかという話だ。確かに、少ないとはいえ木村さんの店も多少の売り上げはある。その売り上げにプラスして6万円だ。
「若い人とか、コロナで困ってる人はたくさんいるでしょう。そういう人に渡さないでバラ撒くのっておかしいですよ」