慣れない弁当販売に乗り出した飲食店も少なくない(イメージ)

慣れない弁当販売に乗り出した飲食店も少なくない(イメージ)

 木村さんの言うことはもっともだが、国の「押し貸し」ならぬ「押し払い」は儲かっていようが困ってなかろうが飲食店なら降ってくる。誤解がないように書くと協力金6万円の対象は東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・兵庫・京都・愛知・岐阜・福岡・栃木の18都府県で、解除された栃木県は4万円となった。条件も細かく見ると地域によって差がある。

「従業員いっぱい雇ってるとこなんかは大変だと思います。あと立地のいいとこでしょうか。私なんか残りの人生見えてますから詰まったら(店を)畳めますけど、大きなとこなんてそうはいかないでしょう」

 人件費と同時に賃料も飲食店を追い詰める。繁華街の飲食店など時短で稼ぎ時まで奪われて、1日6万円で足りるわけがない。コロナ禍の2020年、帝国データバンクによれば飲食店事業者の倒産件数は780件(2021年1月6日発表)と2000年以降で過去最多となった。GoToイートも中止となり、1月7日からの緊急事態宣言で客足はさらに落ち込んだ。国や自治体は補助金や助成金の拡充を図っているが耐えきれずに閉店、廃業のドミノ倒しが止まらない。だからこその大盤振る舞いともいえる協力金1日6万円(重ねるが緊急事態宣言地域以外は各自治体による)、それを精査もせずにバラ撒いた。助かる人も多いだろうが、正規非正規ひっくるめて、そこで働く「雇われ」の人たちに給付金はない。再給付のつもりもない。彼らに関しては「最終的には生活保護」が菅義偉内閣総理大臣の回答だ。被雇用者は生活保護寸前まで、何もしないということだ。

「それでもお金は私に降ってくるわけで、さてどうしようかと思ってます。売り上げ扱いですからね、経費として使うにしても、何を買えばいいやら」

協力金で儲かってるとか言われるので、迷惑です

 協力金は売り上げと同様の扱いになるので事業所得である。厳密に言えば売上と共に収入に計上される。ここから経費を差し引いたものが事業所得、会計処理上は「雑収入」だろう。いずれにせよ、自営業者としては目先の生活に困ってない限り経費として使ってしまうほうがいい。木村さんの話ではないが、筆者の知り合いの飲食関係者にも国産の高級ミニバンに買い替えた者や業務用コーヒーマシンを海外製の新品に買い替えた者がいる。降ってきたものは仕方ないし、税金で取られるくらいなら経費として使うしかない。これはこれで経済を回しているということだろうか。そもそも誰が頼んだわけでもない、国が勝手に振り込んで来る金なのだから。

「だから責められてもね。むしろ私みたいな困ってない年寄りには迷惑です。協力金で儲かってるとか言われるんですから」

 店のなじみ客にもその話は向けられるという。適当にあしらってはいるが内心ヒヤヒヤ、妬まれでもしたら堪らないのが本音だろう。

「必死に弁当を売ってるような店でもお客から言われるそうです。1日6万円もらえていいわねとか、店を閉めたあとも客を入れてるんだろうとか」

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