五輪史上最大の“集金力”を発揮した森氏
これは五輪スポンサーにも当てはまる。事実、豊田章男コメントと前後して、多くの五輪スポンサーが森発言に対する批判を表明している。
五輪スポンサーには、前述のTOPパートナーと、リージョナルスポンサーの2種類がある。TOPパートナーはIOCと契約するが、リージョナルスポンサーは、大会ごとに大会組織委員会と契約する。
東京2020の場合、組織委と契約した企業数は60社以上。そのスポンサー料の合計は、推計で4000億円を超える。過去の大会でのスポンサー料は1500億円前後、東京2020はオリンピック史上、最大の“集金”に成功している。
このスポンサー集めに力を発揮したのが、森会長だった。首相経験者ということもあり、森氏の人脈は政財官・スポーツ界など、至るところに広がっている。しかも、通常、スポンサー契約は1業種1社だったものが、組織委はIOCを動かし、1業種複数社の契約を可能にした。
たとえば銀行では三井住友銀行とみずほ銀行、航空会社ではANAとJALが揃ってスポンサーになっている。新聞社にいたっては、読売、朝日、日経、毎日、産経、北海道新聞の5社にものぼる。
組織委はこれらスポンサー企業の顔色をうかがった。コロナ禍により大会が1年延期されたことで、大会運営には追加費用が生じている。その経費をまかなうにもスポンサー企業の協力が必要だ。事実、国内スポンサー全68社は昨年12月、計220億円を超える協賛金の追加負担を受け入れたばかり。
しかも大会が無観客で行われた場合、チケット収入がゼロになるため、その補填も必要だ。それを考えると、組織委としてはスポンサー企業の意向は最大限、尊重する必要がある。