2011年の東日本大震災でも津波警報の第一報は約3分で発表された。だが、その時点では発展途上段階だったという。
「東日本大震災で想定した津波の高さは宮城で6メートル、岩手で3メートルでしたが、実際には10メートル以上の津波が発生した。低めの予想になってしまいました。実際には断層が3分以上動いていたため、津波の大きさを判定しきれなかったからです。しかも当時の地震計では、東日本大震災は測定範囲を超える大きさでした」(同前)
防災システム研究所所長の山村武彦氏はこう語る。
「東日本大震災以前は陸地と浅い海底にしかセンサーがなかったが、気象庁は震災を教訓に地震や津波情報の迅速化に注力しました。震災後に防災科学技術研究所と連携し、暫定的に『ブイ式海底津波計』というセンサーを水深の深い位置に沈めて、東日本の日本海溝周辺に日本海溝海底地震津波観測網(S-net)」を構築しました」
その後、防災科学技術研究所がケーブル式海底地震計・水圧計を整備したことで、2016年にブイ式海底津波計の運用は終了する。
「防災科学研究所が陸から海底ケーブルを引いて北海道沖から房総半島沖の太平洋の海底に地震計・水圧計を配置しました。当初は156基の計器を設置しましたが、その後追加され180基ほどになっています。
気象庁でもそのデータが使用できるようになり、光ケーブルなどでデータが伝送されるので緊急地震速報の発表が最大約2.5秒早くなった。そうして津波発生の有無、波の高さ予想などを正確に計測して素早く情報を発信することが可能になりました。このケーブル式海底地震計・水圧計は今年から南海トラフでも整備が始まります」(同前)
※週刊ポスト2021年3月12日号