国内

落合陽一氏が見るコロナ後「高齢化は多様性の実現にとって追い風」

“自動運転”の実験の様子(落合氏が主宰するデジタルネイチャー研究室HPより)

“自動運転”の実験の様子(写真は落合氏が主宰するデジタルネイチャー研究室HPより)

 世界を混乱に陥れた新型コロナウイルスの感染拡大。同時に、日本社会におけるデジタル化の遅れが認知されるなど、様々な問題点を浮き彫りにしている。筑波大学准教授でメディアアーティストの落合陽一氏は近年、大学の研究室や自ら代表を務めるピクシーダストテクノロジーズ株式会社、研究者代表を務める国のプロジェクト「xDiversity」などで、障害を持つ人の補助や介助に関わるプロジェクトに力を入れている。デジタル化が加速するコロナ後の社会で、その分野にどのようなテクノロジーが実装されるのか。落合氏が語る。

 * * *
 多様性のための技術を研究していると、よく「かわいそうな人を助ける研究」のような切り取られ方をしますが、強い違和感を覚えます。たとえば居酒屋で、たまたま隣にいた外国人と交流ができたら、同質な日本人とだけ話すよりも、世界が広がって楽しいでしょう。多様な人とのコミュニケーションには、大きな価値があります。それが、ダイバーシティ(多様性)というテーマに取り組むいちばんの理由です。

 研究の一例を紹介しましょう。いまは、音声をリアルタイムでテキスト化する技術の精度が向上したので、AR(拡張現実)を利用したゴーグルを使えば、耳の聞こえない人が目の前で喋っている人の言葉を字幕にして読むことができます。

 ただし、聴覚障害者だけがゴーグルをつけていると、喋っている人には字幕が見えません。音声のテキスト化も完璧ではないので、誤変換などのミスがあるのですが、それが話し手の側にはわからないわけです。大学の研究室には聴覚障害のある学生もいるので、実験をする過程でそういう課題があることがわかりました。そこで私たちは、話し手と聞き手が透明なディスプレイを挟んで向き合い、そこに出る字幕を一緒に見ながら会話ができるようなデバイスを作ろうとしています。

 これからの社会では、こうした技術が、聴覚障害や視覚障害のある人たちだけでなく、多くの高齢者の役に立つことになるでしょう。人間は加齢によって耳が遠くなったり、目が見えにくくなったりします。それをカバーする技術が求められるようになると考えられるので、高齢化の進行は、多様性の実現にとってある意味で追い風ともいえるのです。

 聴覚障害者のための技術は、高齢者の認知症を減らすことにつながる可能性もある。耳が遠くなると、認知機能が低下するという話があります。人との対話が楽しくなくなり、孤立してしまうことが一因でしょう。テクノロジーの力で聴覚が衰えてからも活発に人と交流できるようになれば、脳の働きも活性化する可能性はあると思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン
暑くなる前に行くバイクでツーリングは爽快なのだが(写真提供/イメージマート)
《猛暑の影響》旧車會が「ナイツー」するように 住民から出る不満「夜、寝てるとブンブン聞こえてくる」「エンジンかけっぱなしで眠れない」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日のなかベビーカーを押す海外生活》眞子さん、苦渋の決断の背景に“寂しい思いをしている”小室圭さん母・佳代さんの親心
NEWSポストセブン
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵被告(62)
《信者の前で性交を見せつけ…》“自称・創造主”占い師の濱田淑恵被告(63)が男性信者2人に入水自殺を教唆、共謀した信者の裁判で明かされた「異様すぎる事件の経緯」
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン