ライフ

神奈川県立歴史博物館【3】 壇蜜はなぜ浮世絵の湯飲みに注目した?

神奈川県域にあった東海道の9つの宿駅を浮世絵で紹介し、作品は定期的に入れ替えられる

神奈川県域にあった東海道の9つの宿駅を浮世絵で紹介し、作品は定期的に入れ替えられる

 美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜。日本美術応援団の2人が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は神奈川県・横浜市の神奈川県立歴史博物館の第3回。2人が港町の歴史や風情を感じる浮世絵を見て回る。

山下:神奈川県立歴史博物館は「かながわの歴史と文化」を扱い、豊富な資料を展示しています。明治の天才洋画家・五姓田義松の絵画や横浜眞葛焼などの美術品を収蔵し、とりわけ丹波コレクションを中核とする浮世絵が充実しています。

壇蜜:丹波恒夫さんは横浜で貿易商をしながら、地元ゆかりの浮世絵を集められたとか。約6000点を譲られたそうで、個人のコレクターが後世の博物館に貢献しているのですね。

山下:常設展では神奈川県域の東海道の宿場が順に浮世絵で紹介され、現在は箱根宿です。『箱根宿十一』は美人画で有名な溪斎英泉の作品で、女性と宿駅の風景の組み合わせで“美人東海道”シリーズと呼ばれます。

壇蜜:蚊帳から出た女性の傍らに湯飲みが2つ……。

山下:その描写で男性の存在を匂わせています。初代の歌川広重が描いた川崎宿など、時期によって多彩な浮世絵が楽しめますよ。

壇蜜:『横浜居留地』は開港を経た明治中期の街並み。洋風の領事館の横を馬車と人力車が走っています。

山下:小さな外国と呼ばれた、居留地の西洋建築です。日本大通りを中心とした横浜の特色ある風景ですね。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。

●神奈川県立歴史博物館
【開館時間】9時30分~17時(最終入館は閉館30分前まで)※開館状況はHPにて要確認
【休館日】月曜(祝日の場合は開館)、年末年始(12月28日~1月4日)、資料整理ほか臨時休館あり
【入館料】一般300円※特別展は別料金
【住所】神奈川県横浜市中区南仲通5-60

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年3月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
「山健組組長がヒットマンに」「ケーキ片手に発砲」「ラーメン店店主銃撃」公判がまったく進まない“重大事件の現在”《山口組分裂抗争終結後に残された謎》
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
財務省の「隠された不祥事リスト」を入手(時事通信フォト)
《スクープ公開》財務省「隠された不祥事リスト」入手 過去1年の間にも警察から遺失物を詐取しようとした大阪税関職員、神戸税関の職員はアワビを“密漁”、500万円貸付け受け「利益供与」で処分
週刊ポスト
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン