新型コロナワクチンの集団接種に向けた予行演習会場(福島県相馬市=時事通信フォト)

新型コロナワクチンの集団接種に向けた予行演習会場(福島県相馬市=時事通信フォト)

 人口の半分がワクチンを接種したイスラエルは、ワクチンを2回接種した人と、新型コロナウイルス感染症から回復した人に対し、「グリーンパス」と呼ばれるワクチン接種証明書を発行している。

「グリーンパスを持っている人はイベントの参加や外食、ジムでのトレーニング、海外への渡航などが認められる方向です。ほかにもポーランド、エストニア、ルーマニアなどでも、既存の検査や隔離の代わりとして、ワクチンパスポートを認めることを発表しています」(一石さん)

 導入が進むのは国レベルだけではない。オーストラリアのカンタス航空が搭乗者にワクチン接種の証明を義務づける可能性を公表するなど、民間企業でも導入が検討され始めている。2月21日、米経済誌『フォーブス』はこう報じている。

《EU(欧州連合)の多くの国が、ワクチンパスポートの導入に取り組んでいる。ポーランドでは、旅行の際に携帯電話にQRコードをダウンロードして携行し、デンマークではスマホアプリが第二のパスポートのようなことになる》

 注目すべきは、そのEUの動向だ。EUの行政執行機関・欧州委員会の広報担当者によると、今年の夏の旅行シーズンを控えたEUと加盟27か国は、ワクチンパスポートの準備作業を開始し、3月末までに法案を提出する方針だ。

「制度の詳細は3月中に発表される予定で、パスポートの発行は早くて6月になりそうです。EU非加盟の国からの往来の際もパスポートが適用される可能性があるため世界的な注目度が高く、EUでの制度化に背中を押される形で日本でも導入の議論が進む可能性があります」(前出・欧州在住ジャーナリスト)

対応が遅れると日本だけが取り残される

 日本では公的な導入計画はまだないが、民間では今後ワクチンパスポートが導入されるケースが出てきそうだ。

「パスポートにより集客が期待できたり、顧客が安心安全を期待してパスポートを求めたり、医療施設における感染対策として重要な分野などにおいては、パスポートの導入が加速する可能性があります。たとえばホテルや観光施設、スポーツや文化施設、高齢者施設は、この先パスポートがないと利用できなくなるかもしれません」(一石さん)

 医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが注目するのは、「夜の飲食店」だ。

「2回目の緊急事態宣言で“狙い撃ち”されたことからも、政府が夜の飲食店を危険視していることは明らかです。ワクチンには自分が感染しないことのほかに拡散防止効果があるので、政府が夜の飲食店の利用に際し、ワクチンパスポートの提示を求めるようになったり、深夜まで営業したい飲食店が自主的にパスポート提示を求めるようになるかもしれません」

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