「もともと俳優の養成所や劇団が声優を輩出していたこともあり、とくにベテランの方には『声優である前に俳優です』と明言される方もいらっしゃいます。 また、映像出演はなくても舞台に立たれている方は多くいます。
たとえば『声優探偵』主演の沢城千春さんもそうですが、アニメの仕事をされる前にいくつも舞台に出演されています。ラフィングライブ(山寺宏一、水島裕、野坂実による演劇ユニット)やクロジ(声優の福圓美里と松崎亜希子らが立ち上げた劇団ユニット)のようにいろんな声優さんを集め舞台公演をする企画もあります。養成所や専門学校によっては俳優としての演技レッスンに力を入れています。
すでにご活躍の方はとくに、俳優としての技術を磨いてこられていると思います。経験を積む中で、ドラマ、映画、舞台などメディアごとの特徴を理解されるほどに、それぞれのジャンルで素晴らしい俳優としてご活躍されていくでしょう」
また、ゲーム&アニメライターの早川清一朗氏も「声優は俳優の仕事のひとつ」と指摘しつつ、SNSが普及した現在の社会では、テレビドラマにおける声優の起用がプロモーション上のメリットにもなると話す。
「そもそも声優は俳優の仕事のひとつなので、ドラマへの出演は驚くことではありません。人気のある声優は一日の間に複数の収録現場や舞台を回ってさまざまな役柄を演じることも多く、圧倒的な経験値がもたらす演技の幅の広さや深さには驚くべきものがあります。純粋に役者としての能力が高いため、ドラマに声優が起用されるのはごく自然な流れと言っても過言ではありません。
また、有名声優の出演はSNSでの話題になりやすいため、ドラマにとって貴重な宣伝効果をもたらすことが多くなっています。個人が宣伝役を担う現代社会においては、ドラマへの声優の起用は制作側にとっても重要な要素となっているのではないでしょうか」
声優と俳優は様々な共通点があるようだ。SNSを見据えたマーケティング効果も踏まえれば、今後は声優の俳優業への進出が、より一層盛んになっていくのかもしれない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)