ビジネス

ホンダとF1プレイバック あの情熱の時代は過ぎ去ろうとしている

F1に情熱を傾けた本田宗一郎(写真/AFP=時事)(写真/AFP=時事)

F1に情熱を傾けた本田宗一郎(写真/AFP=時事)

 ホンダは2021年シーズンを最後にF1から撤退することを決めた。同社は1964~1968年(第1期)、1983~1992年(第2期)、2000~2008年(第3期)、2015年~現在(第4期)と、長きにわたりF1に参戦してきた。4度目の撤退の理由は、決して成績不振によるものではない。

『技術屋の王国 ホンダの不思議力』などの著書がある経済ジャーナリストの片山修氏が言う。

「昨シーズンは3勝を含む14回の表彰台を獲得。年間チャンピオンに手が届くところまで力を伸ばしてきていた。そんなタイミングでの撤退は、ビジネス上の理由が大きいでしょう。

 創業者の本田宗一郎氏が早くからF1に取り組んできた理由は、世界最高峰の舞台で培った技術は一般車にも反映されると考えていたから。レースは“実験の場”だったわけです。

 しかし、世界の自動車のトレンドは電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)など環境対応車に移ろうとしている。もはや旧来のエンジンが主役のF1のようなレースで世界一になっても“実益”は少ない。

 F1参戦には年間で数百億円の費用がかかる。“金食い虫”からの撤退は歴史の必然かもしれません」

 ホンダでは、4月1日付で三部敏宏専務が社長に昇格。現社長の八郷隆弘氏は代表権のない取締役に退き、株主総会後の6月に退任予定だ。

 八郷氏はかつて、社長就任後の記者会見で「ホンダらしい魅力的な商品を提供し続けたい」と決意表明した。しかし600万台以上の四輪車販売を目指した拡大戦略は順調とはいかなかった。四輪事業の売上高営業利益率は1.5%前後(2020年3月期)に沈み、現実には工場閉鎖などリストラの連続だった。

 ホンダはF1撤退の理由を「カーボンフリー(二酸化炭素など温室効果ガスを排出しない技術)を加速させるため」と説明しているが、リストラ策の一環という面は否定できないだろう。

「ホンダらしさ」とは何か

 かつてF1人気は日本でも空前絶後だった。日本GP開催時は全国からファンが鈴鹿サーキットに集まり、観客席はアイルトン・セナの母国であるブラジル国旗を振る日本人で埋め尽くされた。

 テレビでもゴールデンタイムでF1中継を放送。1991年の日本GPは視聴率20%を超えた。テーマ曲であるT-スクウェアの『TRUTH』は、今もファンの耳に残る。

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン