北朝鮮では昨年初めからの新型コロナウイルスの感染拡大が、ここ数年の経済制裁強化による経済の低迷に拍車をかけており、数年前から高騰していた都市部のマンションなどの不動産価格が、最高値の10分の1まで暴落している。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
社会主義国家の北朝鮮だが、国家が住宅を国民に割り当てるというのは建前となっている。予算不足で住宅を建設しようにも資金を調達できない政府の住宅供給部門はここ数年、闇市場で物資をさばいて裕福になっている新興資本家層に投資を呼びかけ、その資金で住宅を建設。新興資本家層は、その見返りとして受け取った住宅を市民に販売して儲けるという仕組みが定着しつつあった。
だが、それも経済制裁や新型コロナウイルスの感染拡大で様相が一変。毎年春には、新年度予算で住宅や工場、道路の建設工事が行われていたが、今年の場合、住宅建設はほとんどなく、その他の工事も少ない状況だという。
住宅建設の少なさは、北朝鮮の経済を牽引してきた新興資本家層が苦境に追い込まれていることを物語っている。
首都・平壌郊外の物流拠点、平城(ピョンソン)では、品物の入荷が途絶えたことで、まずはその日暮らしをしていた人々がダメージを受け、さらに卸業を営んでいる新興資本家層ですら、現金確保が困難な状況となっている。
なかでも、高級マンションの建築に多額の投資をしていた資本家層は大きなダメージを受けている。一等地の駅前洞(ヨクチョンドン)のある物件では、価格を5万北朝鮮ウォン(約524万円)から3万ウォン(約315万円)に値下げしたが、それでも買い手がつかない状況だという。