マー君ともいわくつき(?)の握手

マー君(右)ともいわくつき(?)の握手をした現役球児時代のいけ団地

 一方で、いけ団地の運の悪さは自身にも降り注ぐ。2回戦の東海大相模戦で、代打で登場した彼は、雨でぬかるんだ内野にヒットを放つ。しかし──。

「その瞬間、NHKの中継は、ちょうどニュースに入って、僕のヒットの映像は放送されませんでした。すぐに足の遅い僕に代走が出されたので、中継を見ている人もベンチにいる僕のユニフォームがなぜ泥だらけなのかわからなかったと思います。その日、観戦に来られなかった母は、息子が甲子園初ヒットを打ったことを知りませんでした(笑)。どこまでついてないんでしょうね」

 チームは準決勝で前田健太(現ミネソタ・ツインズ)のいたPL学園を破り、決勝に進出。紫紺の大旗を賭けた決勝は横浜を相手に、0対21と大敗したが、閉会式で首にかけてもらった準優勝のメダルはいけ団地にとって生涯の勲章だ。

 そして、いけ団地の呪いの極めつきは最後の夏である。開会式の直前、球児たちは室内練習場に集められて入場を待っていた。いけ団地はレンズ付きフィルムの「写ルンです」を手にし、2006年の甲子園ヒーローたちと写真を撮っていく。

 愛工大名電の堂上直倫(現・中日)に横浜高校のエース左腕・川角謙、大阪桐蔭の中田翔(現・北海道日本ハム)……そして夏3連覇を目指した駒大苫小牧の主将・本間篤史と、田中将大(現・楽天)らである。

 堂上のいた愛工大名電は初戦で敗退し、横浜も大阪桐蔭に敗れ初戦敗退。その大阪桐蔭も2回戦で中田翔が早稲田実業の斎藤佑樹から4打席3三振を喫して敗れ去った。

「唯一、写真を撮ろうとして撮れなかったのが斎藤佑樹選手です。ちょうどトイレに行っていたみたいで、戻った時には開会式が始まるところだった。延長15回引き分け再試合となった早稲田実業と駒大苫小牧の決勝で、本間選手は再試合を含め8打数無安打、田中マー君は大会期間中、体調を崩してしまい、決勝の再試合では最後の打者になってしまった……。あの年の甲子園で、結局、実力を存分に発揮できたのは、自分が写真を撮ろうとして撮れなかったハンカチ王子だけではなかったでしょうか。自分でも恐ろしい呪いです。誤解してほしくないのは、誰かを苦しめようとか、不幸にしようとか、そういう気持ちだったわけじゃない。最初はほんの、遊び心だったんです……」

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